複数の会社の決算書を比較することで、その会社の個性がよりわかるようになります。
今日はファミレス大手の2社、すかいらーくグループとサイゼリヤを比較します。
皆さんはどちらがお好みですか?
この記事を通して両社の違いを感じて頂けたら、また少しでもあなたの投資の参考になれば嬉しいです。
なお、すかいらーくグループは12月決算、サイゼリヤは8月決算と、決算期にズレがあります。
サイゼリヤはすでに2022年8月期第3四半期決算も発表済ですが、同じ四半期で比べるため、すかいらーくグループは2022年12月期第2四半期決算、サイゼリヤは2022年8月期第2四半期決算で比較します。
■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
・売上高
2022年度第2四半期の売上高・増収率は以下の通りです。
売上高はすかいらーくがサイゼリヤの2倍と上回りました。
増収率は両社とも+10%を上回りました。
通期予想に対する進捗度は両社とも40%台中盤でした。
過去9年間(2013年度~2021年度)の売上高の推移は以下の通りです。
売上高はコロナ禍によって2020年度、2021年度と大幅に落ち込みました。
増収率の推移は以下の通りです。
すかいらーくは、2020年度の落ち込みが大きく、2021年度の回復は小さいことがわかります。
もちろん両社ともに苦しい環境であったと思いますが、サイゼリヤの方が、コロナ禍にうまく対応したようです。
・営業利益・純利益
2022年度第2四半期の営業利益・純利益は以下の通りです。
まず通期予想ですが、すかいらーくが▲2,000百万円の赤字予想に対し、サイゼリヤは7,700百万円の黒字予想となっており、明暗がわかれています。
実際に第2四半期でも、すかいらーくは赤字、サイゼリヤは黒字となりました。
同じファミレス業界でありながら、ここまで明暗が分かれるのはとても興味深いです。
過去9年間(2013年度~2021年度)の純利益の推移は以下の通りです。
すかいらーくは、実はコロナ禍前から純利益が低迷していたことがわかります。
2016年度以降減益が続いている中でのコロナ禍でした。
サイゼリヤも同じくコロナ前から苦戦しており、2018年度は▲32.3%、2019年度は▲1.9%と減益が続いていましたが、すかいらーくほどではありません。
・利益率
コロナ前の過去7年間(2013年度~2019年度)の純利益率の推移は以下の通りです。
2017年度にサイゼリヤがすかいらーくを逆転し、現在も利益率で若干上回っています。
すかいらーくは2016年を頂点に、利益率の低下が続いています。
厳しい状況が続く中で2020年のコロナショックに突入したことがわかります。
■BS(貸借対照表)の比較
次に、BSを比較します。
2022年度第2四半期の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
資産合計はすかいらーくがサイゼリヤよりも約2.9倍大きいですが、財務の安全性はサイゼリヤが上回っています。
サイゼリヤはすかいらーくより現金が多く、有利子負債が少なく、自己資本比率も高いです。
両社のBSを図にすると以下の通りです。
短期的な安全性を示す流動比率(流動資産÷流動負債×100%)は、すかいらーくが58.1%、サイゼリヤが274.6%でした。
すかいらーくは安全である目安といわれる100%を大きく下回りました。
すかいらーくは非流動資産の割合の多さが特徴的です。
主な内容は有形固定資産(196,198百万円、非流動資産の50.7%)と、のれん(145,567百万円、非流動資産の37.6%)です。
サイゼリヤはのれんの計上がありませんので、すかいらーくがM&Aによって企業規模を拡大してきたことがわかり、同社の戦略の大きな違いを感じます。
■CF(キャシュフロー計算書)の比較
続いて、CFを比較します。
2022年度第2四半期のCFの概要は以下の通りです。
両社とも、本業から生み出すキャッシュ(営業CF)はプラスです。
キャッシュフローの概要を図にすると以下の通りです。
まずは、すかいらーくです。
続いてサイゼリヤです。
両社を比べると、すかいらーくの財務CFのキャッシュアウトの大きさが目立ちます。
主な内容はリース債務の返済による支出(▲16,904百万円)、長期借入金の返済による支出(▲8,928百万円)です。
■その他の項目(株価、配当など)
株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
・PER・株価
すかいらーくは通期業績予想が赤字のため、PER情報はありません。
サイゼリヤは17倍です。
割安の目安とされる15倍に近い水準です。
両社の株価の推移は以下の通りです。
まずはすかいらーくです。
続いて、サイゼリヤです。
両社のチャートからも、すかいらーくが低迷を続けているのに対し、サイゼリヤは回復の動きが出てきており、とても対照的です。
・配当
直近5年(2017年度~2021年度)の両社の1株配当の金額は以下の通りです。
すかいらーくが2019年度に減配、2020年度に無配となった一方で、サイゼリヤはコロナ禍でも減配をせず、コロナ前からの配当額を維持しています。
2020年度はサイゼリヤも純利益が赤字となり、大変厳しい経営環境でしたが、それでもなお減配しなかったというのは、株主還元への強い意志を感じます。
株主還元の姿勢としては、サイゼリヤが上回ります。
・株主優待
株主優待は株式投資の楽しみの1つです。
両社とも株主優待があります。
すかいらーくは100株以上300株未満保有で、年に2回2,000円相当の飲食代割引カードが送られます。
サイゼリヤは100株以上500株未満保有で、食事券(500円)が4枚送られます。
1年以上の継続保有が条件です。
■おわりに
ファミレス大手2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。
ファミレスということで身近に感じる方も多いと思いますが、その会社の財務内容まではなかなか考えないですよね?
今回比較して見て、私自身両社の違いについてたくさんの気づきが得られました。
これまでは特に根拠もなく「いつかすかいらーくの株を買って、優待もらいたいな」と思っていましたが、今回の比較を通して、投資先としてのより魅力的なのはサイゼリヤの方だと感じました。
厳しい環境下での耐性、貸借対照表の安全性、株主還元の姿勢などが理由です。
皆さんはいかがでしょうか?
この記事は個別の銘柄をオススメすることが目的ではありません。
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
★★私が株式投資において参考にした書籍を以下の記事にまとめています!★★
よろしければご覧ください!
コメント