【決算書比較】スシローとくら寿司、あなたはどちらがお好み?

決算分析

【更新記事あり!】
本記事以降の決算発表についても記事を書いています!
興味がある方は、以下の記事をご参照下さい。

最新の決算比較 こちらからどうぞ!

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値上げ、おとり広告、ビール半額キャンペーン広告のフライング掲載、マグロ偽装、社長逮捕・・・

最近何かと話題が尽きないのが回転寿司チェーンです。

あなたはどこの回転寿司チェーンがお好きですか?

Twitterでアンケートをとったところ、結果は以下の通りでした。

※Twitterのページよりスクリーンショット


スシローはま寿司が接戦でしたが、スシローが1位に輝きました!
前職の営業秘密を持ち出し、社長が逮捕されたかっぱ寿司は4位に沈みました。

アンケートにご協力頂いた皆さん、ありがとうございました!

この記事では、回転寿司チェーン大手2社、スシロー(株式会社FOOD & LIFE COMPANIES、本記事では「スシロー」と表記します)とくら寿司(くら寿司株式会社)の決算書を比較します。

複数の会社の決算書を比較することで、その会社の個性がよりわかるようになります。

両社の違いを感じて頂き、少しでもあなたの投資の参考になれば嬉しいです。

なお、スシローは9月決算、くら寿司は10月決算と、決算期にズレがあります。

以下記事では、8月に発表されたスシローの2022年9月期第3四半期決算と、9月に発表されたくら寿司2022年10月期第3四半期決算とで比較します。

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■PL(損益計算書)の比較

まずはPLを比較します。

・売上高

2022年度第3四半期の売上高・増収率は以下の通りです。

売上高はスシローがくら寿司の1.6倍上回りました。

増収率はそれぞれ18.6%21.8%と大きく増収となりました。

通期予想に対する進捗度が75.7%73.8%と順調に見えますが、両社とも直近の決算発表で業績予想の下方修正が行われました。

以下の通り、業績の下方修正が行われました。


スシローは5月、8月と、2度にわたり下方修正しました。

今年3月にまん延防止等重点措置の解除はあったものの、来店客数の回復が想定を下回ったこと、6月9日付で消費者庁より景品表示法に関する措置命令を受けお客様の信頼を損ねる事態を招いたこと、各種コスト上昇減損損失(3,289百万円)の計上などにより、今回2度目の下方修正に至りました。

当初予想と比べると、売上高は▲10%、営業利益は▲60%、純利益は▲75%と、大きく下方修正されました。

一方のくら寿司は、新型コロナ第7波の影響により最需要期である7月、8月の来店客数が当初計画に比べ大きく減少したこと、今なお人流減少が続いていること、地政学的リスクの上昇に伴う食品価格エネルギー価格などのコスト上昇、を下方修正の理由として挙げています。

当初予想と比べると、売上高はわずかに▲3%でしたが、営業利益は赤字転落、純利益は▲69%と、各利益は大きく下方修正されました。


過去6年間(2016年度~2021年度)の売上高の推移は以下の通りです。


いずれの年も、スシローがくら寿司を上回りました。

コロナ禍で多くの外食産業が売上高を大きく落としましたが、回転寿司業界はテイクアウト需要の取込やファミリー層の売上を伸ばすなど、好調でした。

特にスシローの売上高は右肩上がりで伸びています。

増収率の推移は以下の通りです。


2018年以降、スシローの増収率が上回り、成長力の強さが示されています。

・営業利益・純利益

2022年度第3四半期の営業利益・純利益は以下の通りです。

営業利益はスシローが12,372百万円黒字だった一方、くら寿司は▲382百万円赤字でした。

純利益は両社とも黒字になりましたが、スシローは前年同期のおよそ半分でした。

くら寿司ですが、営業利益が▲382百万円の赤字にもかかわらず、純利益が1,711百万円の黒字になっています。

この要因は営業外収益に計上されている「助成金収入(3,094百万円)」です。
助成金によってなんとか最終黒字を確保しているという状態です。

両社ともに第3四半期の営業利益・純利益よりも通期予想の営業利益・純利益の方が低く、第4四半期の3ケ月は、両社とも赤字になる見込みです。

飲食業界で注目される指標の一つが「原価率」です。
売上に対して、どれだけ原価をかけているか、「売上原価÷売上高×100%」で計算します。

スシローの原価率は、46.4%(売上原価98,372百万円 ÷ 売上高211,937百万円 × 100%)です。
くら寿司の原価率は、45.4%(売上原価61,177百万円 ÷ 売上高134,756百万円 × 100%)です。

わずか1%の違いではありますが、スシローの方が相対的に多く仕入れ(ネタ)にお金をかけていることがわかります。

過去6年間(2016年度~2021年度)の純利益の推移は以下の通りです。


2017年度以降はスシローが上回り特に2019年以降、その差が大きく広がっています。

特にコロナ感染初年度の2020年度スシローが黒字なのに対し、くら寿司が赤字であったことは、両社の収益力の違いが如実に表れています。

・利益率

2022年度第3四半期の利益率・ROEは以下の通りです。


利益率・ROEともにスシローが上回りました。

過去6年間(2016年度~2021年度)の営業利益率の推移は以下の通りです。

こちらも、2017年度以降はスシローが上回り、特に2019年以降、その差が大きく広がっています。

スシローは、売上高を伸ばしながら、利益率も改善し、その結果純利益も伸ばしている、ということがよくわかります。

くら寿司は営業利益率の低下が続いており、心配です。

■BS(貸借対照表)の比較

次に、BSを比較します。

2022年度第3四半期の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。


資産合計はスシローがくら寿司よりも約3倍大きいです。
ただその割には自己資本には差はなく、自己資本比率はくら寿司の方が良好です。

有利子負債が少ないのもくら寿司の特徴です。
スシローの有利子負債はくら寿司の102倍です。

両社のBSを図にすると以下の通りです。

両社を比べると、スシローの固定負債が非常に大きいところが特徴的です。

主な内容はリース負債103,379百万円)と社債及び長期借入金89,913百万円)です。

リース債務は店舗などの建物をリースした場合に計上するものです。
両社の会計基準の違い(スシロー:IFRS、くら寿司:日本基準)によるもので、スシローにのみ計上されています。

■その他の項目(株価、配当など)

株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。

・PER・株価

PERはスシローが90.7倍、くら寿司が139.7倍と、両社とも業績の下方修正をしたこともあり、かなり高くなっています。
今年度のPERはほとんど参考にならないと思いますので、気にしないでいいと考えています。

両社の株価の推移は以下の通りです。

まずはスシローです。

※スシローの株価チャート。SBI証券お客様サイトより抜粋。

2021年11月以降、下落が止まりません。
株価は移動平均線から離れており、下落の強さを感じます。

5月と8月、2度にわたる下方修正もありましたので致し方ありません。
金額の節目である2,000円あたりで、下げ止まるのか、さらに下落が続くのか、注目です。

続いて、くら寿司です。

※くら寿司の株価チャート。SBI証券お客様サイトより抜粋。

くら寿司は2021年6月末の高値4,715円以降、だらだらと下落が続いています。

節目の3,000円あたりで下げ止まっているようにも見えますが、移動平均線は下向きですのでまだまだ油断はできません。

・配当

配当利回りはスシローの方が高いですが、両社とも1%にも満たない水準です。

直近5年(2017年度~2021年度)の両社の1株配当の金額は以下の通りです。

スシローは2020年度に4:1で株式分割をしていますので、分割前の配当額は分割後に換算しています。

スシローは2020年度、くら寿司は2021年度に減配しました。

・株主優待

株主優待は株式投資の楽しみの1つです。
両社とも株主優待があります。

スシローは100株以上保有で、年に2回1,100円相当(550円×2枚)優待割引券が送られます。

くら寿司は100株以上保有で、年に1回5,000円相当の電子チケット優待割引券が送られます。
電子チケットが利用できない場合は2,500円相当の紙の割引券も選べます。

※くら寿司の株主優待。SBI証券お客様サイトより抜粋。

優待を含めた総合利回りでは、スシローが1.89%、くら寿司が2.25%と、くら寿司が上回ります。

電子チケットにしたことで、株主によっては利便性が落ちると感じる方もいるとは思いますが、発行に伴うコストが落とせるなどのメリットがありそうです。

■おわりに

回転寿司チェーン大手2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。

過去数年にわたる売上高の推移、純利益の推移、利益率の推移、いずれもスシローが上回りました。

ただ、今年にはいってからは仕入れコストの上昇に加え、おとり広告、ビール半額キャンペーン広告のフライング掲載、マグロ偽装など、数々の不祥事が明るみに出ています。

これで膿は出し切ったのか、それとも氷山の一角なのか・・・・

それはわかりませんが、個人的には、投資対象としては二の足を踏んでしまうところです。
会社に根付いた文化ややり方の根っこは、そう簡単には変えらない、と思っていますので。

一方で、短期的な要因で株価が下落するのは、長期投資の目線では絶好のチャンスになる可能性もあります。
ここはそれぞれの投資家の目利きが試されますね。

投資すべきか、投資すべきではないか、あなたはどう思いますか?

この記事は個別の銘柄をオススメすることが目的ではありません。
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。

本日もお読み頂きありがとうございました!

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