皆さん、カレーライスは好きですか?
この記事では、カレーとも縁の深い食品大手2社、ハウス食品グループ本社とヱスビー食品の決算書を比較します。
複数の会社の決算書を比較することで、その会社の個性がよりわかるようになります。
両社の違いを感じて頂き、少しでもあなたの投資の参考になれば嬉しいです。
なお、この記事では、10/31(火)、11/7(火)に発表された2024年3月期第2四半期決算の数値を用いて比較します。
■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
・売上高
2024年3月期第2四半期の売上高・増収率は以下の通りです。
売上高はハウス食品が倍以上上回りました。
増収率はハウス食品が+6.7%と、+2.8%のヱスビー食品を上回りました。
両社とも期初に発表した業績予想に対する進捗率は50%を割り、業績予想を下方修正しました。
ハウス食品は▲0.6%の302,800百万円に、ヱスビー食品は▲1.6%の124,500百万円に、それぞれ下方修正しました。
カレーで有名な両社ですが、カレールウだけを生産しているわけではありません。
ハウス食品のセグメント別売上高は以下の通りです。
カレールウ製品をはじめとした主力の「香辛・調味加工食品事業」は売上高全体の41%です。
ルウカレー、レトルトカレー、スパイスなどの取扱があります。
「バーモントカレー」「北海道シチュ―」「ククレカレー」フルーチェ」「ギャバン」といったおなじみのブランドです。
売上高の18%を占める「外食事業」は「CoCo壱番屋」でおなじみの(株)壱番屋によるものです。
同じく売上高の18%を占める「海外食品事業」は米国・中国・タイを重点3エリアと位置づけ、展開しています。
米国では豆腐事業にも力を入れています。
現地通貨ベースの前年同期比増収率は、米国:+11.4%、中国:+11.2%、タイ:▲53.5%と、タイが苦戦しています。
タイでは機能性飲料事業を展開していますが、コロナ禍で免疫へのニーズが高まったビタミン飲料市場が低調に推移したことが要因です。
売上高の6%を占める「健康食品事業」は、「ウコンの力」「C1000」などを取り扱っています。
ヱスビー食品のセグメント別売上高は以下の通りです。
「食料品事業」と「調理済食品」に大別されますが、90%が「食料品事業」です。
「食料品事業」をさらに細かく分けると、以下の4つに分類されます。
「スパイス&ハーブ」は「テーブルコショー」「辣油」「七味唐がらし」など、家庭でおなじみのブランドを取り扱っています。
「即席」は「ゴールデンカレー」「とろけるカレー」「濃いシチュー」などを取り扱っています。
「香辛調味料」は「本生 本わさび」やお徳用タイプのチューブ製品などを取り扱っています。
過去13年間(2011年3月期~2023年3月期)とこのQ2の売上高の推移は以下の通りです。
ハウス食品が常に上回っており、その差は縮まっていません。
・営業利益
2024年3月期第2四半期の営業利益は以下の通りです。
売上高同様、営業利益もハウス食品が大きく上回りました。
こちらも倍以上の差をつけ、増益率でもハウス食品が上回りました。
期初の業績予想に対する進捗率はヱスビー食品が59.6%と高く、通期予想を3.6%(5,500百万円→5,700百万円)上方修正しました。
過去13年間(2011年3月期~2023年3月期)とこのQ2の営業利益の推移は以下の通りです。
売上高と同じく、ハウス食品がいずれの年でも上回っています。
売上高を下方修正したハウス食品ですが、営業利益は期初予想を据え置き、20,000百万円達成の姿勢を崩していません。
タイでの不振から海外事業は下方修正しているものの、外食事業など、他のセグメントで補完する計画です。
・純利益
2024年3月期第2四半期の純利益は以下の通りです。
ハウス食品は対前年でおよそ倍増したのに対し、ヱスビー食品は減益となりました。
ハウス食品は進捗率が高く順調に見えますが、退職給付制度改定益6,988百万円、投資有価証券売却益1,967百万円といった一過性の特別利益計上によるものです。
これらの要素を除けば実質的には減益です。
ハウス食品は+2.9%(17,500百万円→18,000百万円)、ヱスビー食品は+4.8%(4,200百万円→4,400百万円)、通期業績予想を上方修正しました。
過去13年間(2011年3月期~2023年3月期)とこのQ2の純利益の推移は以下の通りです。
ハウス食品の2016年3月期の純利益が大きく跳ね上がっている要因は(株)壱番屋株式の追加取得に伴い発生した「段階取得に係る差益」を特別利益に計上したためで、一時的な事由です。
当期は中間時点で前期の純利益に迫る勢いですが、上記の通り一時的な特別利益があるので、その点も加味して見る必要があります。
・利益率・ROE
2024年3月期第2四半期の利益率・ROEは以下の通りです。
利益率・ROEともにハウス食品が上回りました。
過去13年間(2011年3月期~2023年3月期)とこのQ2の営業利益率の推移は以下の通りです。
2015年3月期~2022年3月期にかけて、ハウス食品の利益率は改善を続けてきましたが、2023年3月期は原材料価格の高騰により、利益率が悪化しました。
値上げなどの効果により、今後利益率が改善していくのか、注目です。
ヱスビー食品の2021年3月期の利益率が跳ね上がっているのは、収益認識基準を適用したことにより売上高が減少したことに加え、コロナ禍でプロモーション活動費用や販売活動費用が減少し営業利益が増加したためです。
■BS(貸借対照表)の比較
次に、BSを比較します。
2024年3月期第2四半期の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
資産合計はハウス食品がヱスビー食品の約3倍と大きく上回っています。
ハウス食品の方が自己資本比率は高く、有利子負債は少なく、現金は多く、財務の安全性は高いです。
両社のBSを図にすると以下の通りです。
ハウス食品は流動資産が負債合計を大きく上回っており、財務の安全性の高さが図からも伝わってきます。
■その他の項目(株価、配当など)
株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
・PER・株価
PERは、ハウス食品:17.9倍、ヱスビー食品:10.8倍と、ヱスビー食品の方が割安です。
両社の株価の推移は以下の通りです。
まずはハウス食品です。
2019年5月の高値以来、下落傾向が続いていましたが、今年3月ごろから反転の動きになっています。
続いて、ヱスビー食品です。
ここ4年間ほど、3,500円~5,000円の幅の中で推移をしています。
ガっと一気に動き、しばらく持ち合い、という動きが多いように見えます。
2022年以降、低空飛行が続いています。
PERの低さは、割安というよりも、もしかすると注目度の低さを表しているのかもしれません。
なお、最近注目されているPBRも0.7倍程度と1倍を割っています。
・配当・増配率
配当利回りはハウス食品:1.39%、ヱスビー食品:1.57%と、ヱスビー食品が上回りました。
過去数年の推移を見ると、ヱスビー食品の方が増配を続けているのに対し、ハウス食品は直近4年横ばいが続いています。
・株主優待
株主優待は株式投資の楽しみの1つです。
両社とも株主優待があります。
ハウス食品は100株以上保有(6カ月以上継続保有要)で、年に2回1,000円相当の自社グループ製品詰合せ(食品等)などから選択可能です。
ヱスビー食品は100株以上保有で、年に2回1,000円相当の自社製品詰合せ(レトルト食品・調味料等)が送られます。
■おわりに
食品大手2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。
足元の業績や財務状態はハウス食品の方が良いと感じましたが、際立って業績が伸びているわけでもなく、配当の推移や利回りなどの還元姿勢もやや物足りなく感じる面もあります。
一方のヱスビー食品は、業績はかんばしくありませんし、上記では紹介していませんがQ2累計の営業CFが▲2,445百万円とマイナスである点も気掛かりです。
ただ、、PER・PBR・配当性向の低さ、増配姿勢から、今後何かいいきっかけがあれば、株価の上昇余地はむしろヱスビー食品の方が期待できるのかもしれません。
100株当たりの株価が40万円ほどとやや大きいので、私のポートフォリオのバランスからすると手を出しにくいところですが、今後も観察していきたいと思います。
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
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