損害保険トップを争う2社、東京海上ホールディングス(以下、「東京海上」)と、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(以下、「MS&AD」)の決算書を比較します。
複数の会社の決算書を比較することで、その会社の個性がよりわかるようになります。
両社の違いを感じて頂き、少しでもあなたの投資の参考になれば嬉しいです。
なお、この記事では、11/17(金)に発表された2024年3月期決算第2四半期決算の数値を用いて比較します。
なお、両社とも巨大な企業の集合体のため、簡単に組織概要に触れます。
東京海上HDは、東京海上日動火災保険、イーデザイン損害保険などを傘下に抱えます。
国内損害保険事業、国内生命保険事業、海外保険事業、金融・その他事業で構成されます。
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MS&ADは三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保などを傘下に抱えます。
国内損害保険事業、国内生命保険事業、海外事業、デジタル・リスク関連サービス事業、金融サービス事業で構成されます。
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■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
・経常収益
金融業界では、いわゆる売上高のことを「経常収益」と表現します。
2024年3月期第2四半期の経常収益・増収率は以下の通りです。
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経常収益は東京海上が僅差で上回りました。
増収率は28.5%のMS&ADが上回りました。
両社とも経常収益の業績予想は開示していません。
東京海上の正味収入保険料は、国内で▲0.1%、海外で+9.7%、合計では+7.5%(為替影響除くと+4.2%)となりました。
海外のレートアップや引受け拡大により増収しました。
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過去11年(2013年3月期~2023年3月期)とこのQ2の売上高の推移は以下の通りです。
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経常収益の推移は非常に似ていますが、2022年3月期、2023年3月期は東京海上が差をつけました。
・経常利益・純利益
2024年3月期第2四半期の経常利益・純利益は以下の通りです。
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僅差だった経常収益と異なり、経常利益、純利益は東京海上が2倍以上の差をつけて上回りました。
両社とも前年同期比で2倍以上の増益となりました。(MS&ADの純利益は前期赤字から黒字転換)
東京海上は「国内外でのコロナ関連保険金の減少(反動)、海外主要拠点における保険引受利およびインカム収益の増加等」が主因と説明しています。
MS&ADは「国内損保における新型コロナ関連ロスの減少、資産運用益の増加、海外事業の自然災害ロス減少、ロシア・ウクライナ関連ロスの剥落等」が主因と説明しています。
今回の決算発表では、両社ともに業績予想を修正しましたが、東京海上は上方修正、MS&ADは下方修正でした。
【東京海上】
・経常利益
期初:750,000百万円 → 765,000百万円
・純利益
期初:530,000百万円 → 575,000百万円
【MS&AD】
・経常利益
期初:420,000百万円 → 400,000百万円
・純利益
期初:300,000百万円 → 280,000百万円
過去11年(2013年3月期~2023年3月期)とこのQ2の経常利益・純利益の推移は以下の通りです。
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2020年3月期の経常利益を除いて、全ての年で東京海上が上回りました。
売上高は同規模だったことからも、東京海上の利益創出力の高さがわかります。
・利益率・ROE
2024年3月期第2四半期の利益率・ROEは以下の通りです。
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利益率・ROEはいずれも東京海上が上回りました。
過去11年(2013年3月期~2023年3月期)とこのQ2の経常利益率・純利益率の推移は以下の通りです。
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2021年3月期の経常利益率を除いて、全ての年で東京海上が上回りました。
■BS(貸借対照表)の比較
次に、BSを比較します。
2024年3月期第2四半期の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
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資産合計、自己資本は東京海上が上回りました。
現金、有利子負債(社債)はMS&ADが大きく上回りました。
■その他の項目(株価、配当など)
株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
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・PER・株価
PERは東京海上:12.9倍、MS&AD:10.4倍です。
割安の目安とされる15倍を下回っています。
両社の株価の推移は以下の通りです。
まずは東京海上です。
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続いて、MS&ADです。
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・配当・増配率
配当利回りは、東京海上:3.24%、MS&AD:4.37%と、MS&ADが上回りました。
配当性向は、東京海上:41.7%、MS&AD:45.6%です。
過去8年間と2024年3月期予想の両社の配当の推移は以下の通りです。
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2020年3月期の東京海上以外、全ての年で増配しており、両社とも積極的に株主還元していることがわかります。
2019年3月期については、「機動的な資本水準の調整を目的として実施」した配当ということで、臨時的な配当が行われました。
8年前と比べると1株配当は東京海上で3倍以上、MS&ADで2倍以上です。
こうした増配銘柄をぜひ買いたいものですね。
■おわりに
損害保険トップを争う2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。
両社ともに配当の推移が非常に魅力的に感じました!
金融業界独特の勘定科目がPLでもBSでも随所に見られ、なかなか理解をするのが難しい面もありますが、理解を深めて投資のチャンスを探りたいと思います。
なお、直近の四季報では、それぞれ以下のようにコメントされています。
【増 配】利益柱の自動車保険で損害率悪化するが火災保険で赤字幅が縮小。海外は引き受け強化と料率上昇が寄与し北米地域で伸びる。アジアは台湾でのコロナ関連費用が減り、収支が大幅改善。自然災害の平年並み前提に最高純益を更新。連続増配。 |
【カルテル】企業向け共同保険の保険料調整問題で金融庁や公取委が調査。米グアムの現地法人を23年度中に売却する計画。 |
■MS&AD
【増 勢】主力の自動車保険は交通量の増加によって損害率が悪化。火災保険は料率改定で収支が改善。海外はアジア、欧州などで収益の回復傾向が続く。有価証券売却益の拡大も寄与。国内外の自然災害発生が平年並みを前提に純益急拡大。増配続く。 |
【カルテル】企業向け共同保険での保険料調整問題で金融庁と公取委が調査。国交省から治水活動のサポーターとして認定。 |
今後四季報のコメントがどう変わっていくかも、投資のヒントになりますね。
皆さんはどうお考えですか?
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
★★私が株式投資において参考にした書籍を以下の記事にまとめています!★★
よろしければご覧ください!
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