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ハンドソープ、歯磨き粉、洗濯用洗剤。
普段使う日用品のメーカーにこだわりはありますか?
この記事では日用品大手として私たちの生活にも身近な花王(銘柄コード:4452)、ライオン(同:4912)の2社を比較します。
複数社の決算書を比較することで、その会社の個性がよりわかるようになります。
なお、この記事では、今年2月に発表された2022年12月期の数値を用いて比較します。
■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
両社の売上高・営業利益・純利益と、増収率・増益率は以下の通りです。
・売上高
売上高は花王がライオンの約4倍と、大きく上回りました。
両社とも前年比で増収となりました。
花王は前年比で+9.3%の増収となりましたが、そのうち為替の影響が+5.7%、為替の影響を除く実質では+3.7%でした。
地域別の売上高構成比は以下の通りです。
国内が55%、海外が45%です。
セグメント別・地域別の売上高、対前年増減率は以下の通りです。
原料高騰に伴う価格改定により、ケミカルは+18.6%増収しました。
特に欧州・米州において前年比で増加しました。
ライオンは前年同期から+6.5%の増収となりました。
為替の影響を除く実質では+3.4%でしたので、花王とほぼ同水準です。
セグメント別の売上高は以下の通りです。
為替の影響はありますが、売上高に占める海外の比率は30.3%でした(外部売上高で計算)。
ライオンは、この比率を2030年までに50%に高める方針を掲げています。
為替変動の影響を除く実質増減率では、マレーシア:+12.1%、韓国:+17.2%と牽引し、全体では+7.1%伸びました。
過去8年間(2015年12月期~2022年12月期)の売上高の推移は以下の通りです。
両社とも売上高は横ばいで、成熟産業という印象を受けます。
増収率の推移は以下の通りです。
2018年12月期のライオン(▲14.9%)、2020年12月期の花王(▲8.0%)の減収が目立ちます。
花王はこの7年のうち3年が減収、ライオンは2年が減収です。
ライオンは売上高成長率を重要な指標と位置付けていますので、来年以降も伸びが継続するか、注目です。
・営業利益・純利益
営業利益・純利益は、花王がライオンの3.8~3.9倍程度と、大きく上回りました。
ただし、前年同期比での増益率を見ると、花王は営業利益:▲23.3%、純利益:▲21.5%と大幅な減益となりました。
花王が減益した主要因は原材料価格変動の影響です。
セグメント別の対前年増減を見ると「ハイジーン&リビングケア」が特に苦戦していることがわかります。
特にベビー用紙おむつは中国での市場縮小、競争激化による収益性低下が続き、決算説明会で長谷部社長は紙おむつ事業の撤退も含め、抜本的見直しの必要性に言及しました。
一方のライオンですが、なぜ、営業利益の減益率が小さいのか?
その答えは営業利益に連結子会社・ライオンビジネスサービスが所有する固定資産(土地・建物)の譲渡益53億円が含まれるためです。
これを差し引くと営業利益の減益率は▲24%程となり、花王と同程度となります。
決してライオンの方が好調というわけではありませんので注意が必要です。
減益の要因は花王と同じく原材料価格の上昇です。
両社ともに原材料価格の上昇によって苦しんだ1年でした。
過去8年間(2015年12月期~2022年12月期)の営業利益の推移は以下の通りです。
直近3年間、花王の営業利益減少が続いているのは気になります。
・利益率・ROE
2022年12月期の利益率・ROEは以下の通りです。
両社ともほぼ同水準です。
過去8年(2015年12月期~2022年12月期)の営業利益率の推移は以下の通りです。
2015年12月期には7ポイントの差がありましたが、近年花王の利益率が低下し、今期はわずかにライオンが上回りました。
ライオンの営業利益には上記の固定資産(土地・建物)の譲渡益53億円が含まれるため楽観はできませんが、今後両社の利益率がどのように推移するか注目したいと思います。
■BS(貸借対照表)の比較
次に、BSを比較します。
2022年12月期の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
BSの規模(資産合計)は花王の方がライオンより3.6倍以上大きいですが、偶然にも自己資本比率は同じでした。
ライオンは、資産に占める現金の比率は高く、有利子負債の比率は低く、花王より財務の安全性は高いと言えます。
両社のBSを図にすると以下の通りです。
短期的な安全性を示す流動比率(流動資産÷流動負債×100%)は、花王が165.9%、ライオンが167.9%と両社とも目安の100%を上回りました。
■CF(キャシュフロー計算書)の比較
続いて、CFを比較します。
2022年12月期のCFの概要は以下の通りです。
図にすると以下の通りです。
まずは花王です。
続いてライオンです。
花王の財務CFが、営業CFを上回りました。
財務CFの主な内容は支払配当金:▲68,931百万円、自己株式の取得による支出:▲50,035百万円と、株主還元に非常に積極的であることがわかります。
ただし、株主還元の源泉は本業からの安定したキャッシュ創出力となります。
近年本業が不調なことは、今後の株主還元方針に影響を与える可能性もあり、注意が必要です。
■2023年12月期の予想
2023年12月期の両社の通期予想は以下の通りです。
花王は増収増益、ライオンは増収減益の予想になっています。
ライオンの営業利益については、今期の特殊要素(固定資産(土地・建物)の譲渡益53億円)を除けば+6%ほどになり、売上高の増収率と概ね整合します。
花王は4期連続公表した計画に未達でしたので、今回開示した目標に対しても、投資家は厳しい目で見ていると思われます。
日本の市場回復、インバウンド需要の回復、中国化粧品市場の回復を、ポジティブな要素として想定していますが、特にQ1、Q2でどのような進捗を示すのかに注目です。
進捗が弱いと、さらに株価が下落する可能性もあるかもしれませんね。
■その他の項目(株価、配当など)
株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
・PER・株価
PERは投資を検討する際に気になることの一つです。
花王は26.8倍、ライオンは23.8倍、ライオンの方がやや割安です。
両社の株価チャートは以下の通りです。
両社とも低迷が続き、コロナショック前の水準からははるかに下で推移しています。
・配当
配当性向、配当利回りは、いずれも花王が上回りました。
さすがは日本を代表する連続増配銘柄、積極的な株主還元の姿勢がみてとれます。
花王の1株当たり配当金の推移は以下の通りです。
2023年12月期も増配予定が示され、実に34年連続増配予定となっています。
ただ、気になるのは配当性向が非常に高いことです。
2023年12月期予想では79.2%と非常に高いです。
2022年12月期第2四半期決算時の資料には「配当性向目標40%」と記載がありましたが、大きく上回ってしまっています。
営業利益の低迷が続いていますので、今後の配当方針に影響がでないか、心配です。
一方のライオンも2023年12月期の増配を予定しており、8年連続増配予定となっています。
配当性向目標は「30%」を掲げています。
花王に比べると配当性向は低いため、余力があると考えられますが、予想配当性向は42.3%と、配当方針に対して利益創出力が追い付いていない印象もあります。
今後の推移に注目します。
■おわりに
日用品大手2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。
私自身はライオンの株主(100株)ですので、ややライオンびいきになってしまった面もあったかもしれませんが、皆さんはどちらの会社の株主になりたいと思いましたか?
PLからは両社とも原材料高に苦しむ姿が、BSからはライオンの相対的な安全性の高さが、CFからは花王の積極的な株主還元姿勢が、それぞれ感じられたのではないでしょうか?
人それぞれチェックするポイント、重視するポイントが違うと思いますので、是非あなたなりの視点でも分析してみて下さい。
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
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よろしければご覧ください!
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