ウォーレン・バフェットも注目する総合商社。
その代表格である2社、三菱商事と三井物産の決算書を比較します。
両社の違いを感じて頂き、少しでもあなたの投資の参考になれば嬉しいです。
5/1(水)、5/2(木)に発表された2024年3月期決算の数値を用いて比較します。
■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
・売上高
2024年3月期の売上高・増収率は以下の通りです。
売上高は三菱商事が三井物産を約47%上回りました。
その額19.5兆円!
両社とも減収ではありますが、過去最高の業績をあげた前期から▲6~▲9%程度の減収にとどまりました。
通期予想は両社とも非開示です。
三井物産のセグメント別売上高は以下の通りです。
生活産業、エネルギー、化学品の3セグメントが売上高構成比20%を超え、牽引しました。
前年同期比では、生活産業:▲2.8%、エネルギー:▲16.1%、化学品:▲11.9%、とそれぞれ減収となりました。
三菱商事の事業は10セグメントに分かれますが、売上高の内訳は開示されていません。
セグメント別の純利益内訳は開示されていますので、後程説明します。
過去11年間(2014年3月期~2024年3月期)の売上高の推移は以下の通りです。
2014年3月期、2015年3月期は三井物産の方が上回っていましたが、2016年3月期以降は三菱商事が上回っています。
・純利益
2024年3月期の純利益は以下の通りです。
純利益は三井物産が上回りました。
絶好調だった前期と比べると両社減益でしたが、三菱商事:▲18.4%、三井物産:▲5.9%と、三井物産は減益幅が小さく、純利益で三菱商事を上回りました。
期初の通期予想に対する達成率は三菱商事:104.8%、三井物産:120.9%と、三井物産は予想を20%も上回る好調な1年でした。
三菱商事のセグメント別純利益構成比は以下の通りです。
純利益全体の30%を占める金属資源、23%を占める天然ガスが、利益を牽引しました。
金属資源は、前期に豪州原料炭事業などで爆発的な利益を叩き出した反動で、前期比▲33%の減益です。
天然ガスは、前期のLNG販売事業の取引損失の反動もあり、前期比+29%の増益です。
三井物産のセグメント別純利益構成比は以下の通りです。
純利益全体の32%を占める金属資源(売上高構成比:15%)、26%を占めるエネルギー(売上高構成比:22%)、23%を占める機械・インフラ(売上高構成比:10%)が利益を牽引しました。
金属資源は、原料炭・鉄鉱石価格の下落により前年同期比▲24%の減益でした。
機械・インフラは、資産リサイクル益、船舶・VLI・建機好調により前期比+45%の増益でした。
売上高を牽引したと紹介した化学品(売上高構成比:21%)は純利益構成比では4%、生活産業(売上高構成比:24%)は純利益構成比では9%と、利益貢献度は売上高に比べると高くありません。
過去11年間(2014年3月期~2024年3月期)と来期予想の純利益の推移は以下の通りです。
2016年3月期は赤字でしたが、それ以外の年は黒字です。
2022年3月期は両社とも過去最高益を記録しました。
今期は両社とも前期比で減益ですが、それでも過去2番目の利益を叩き出しました。
ほとんどの年で三菱商事が上回りましたが、今期は三井物産が2021年3月期以来、上回りました。
毎年安定して右肩上がり、というわけではなく、市況や外部環境によってデコボコが大きいのが総合商社株の特徴です。
・利益率・ROE
2024年3月期の利益率・ROEは以下の通りです。
利益率、ROEともに三井物産が上回りました。
三井物産は、第2四半期時点では売上高利益率:7.2%、ROE:13.6%でしたので、期末にかけてグッと利益が伸びた印象です。
(三菱商事の第2四半期時点は、売上高利益率:4.9%、ROE:11.1%)
過去11年間(2014年3月期~2024年3月期)の純利益率の推移は以下の通りです。
2016年3月期は両社とも赤字であったため、利益率がマイナスになっています。
上げ下げの大きな流れは両社とも極めて類似していると感じますが、2018年3月期以降は三井物産が純利益率で上回っています。
■BS(貸借対照表)の比較
次に、BSを比較します。
2024年3月期の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
資産合計は三菱商事が三井物産の1.4倍と上回りました。
一方、自己資本比率では三井物産が44.6%と、38.6%の三菱商事を上回りました。
両社のBSを図にすると以下の通りです。
規模は三菱商事の方が大きいですが、貸借対照表のバランスは非常に似ています。
■CF(キャシュフロー計算書)の比較
続いて、CFを比較します。
2024年3月期のCFの概要は以下の通りです。
両社とも、本業から生み出すキャッシュ(営業CF)はプラスです。
営業CFは三菱商事の方が大きく、投資CFは三井物産が大きいところが特徴的です。
キャッシュフローの概要を図にすると以下の通りです。
まずは三菱商事です。
続いて三井物産です。
三菱商事の投資CFは、有形固定資産等の取得による支出(▲520,542百万円)がある一方で、持分法で会計処理される投資の売却による収入(+349,160百万円)により、プラスとなりました。
三井物産の投資CFは、持分法適用会社に対する投資の取得及び売却・回収(▲306,086百万円)、有形固定資産等の取得及び売却(▲281,023百万円)により、マイナスとなりました。
■その他の項目(株価、配当など)
株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
・PER・株価
PERは三菱商事:15.0倍、三井物産:12.8倍です。
両社の株価の推移は以下の通りです。
まずは三菱商事です。
コロナショック後の2020年4月には一時700円(1:3の株式分割後換算)を割るまで下落しましたが、その後資源価格の高騰などを背景に業績は絶好調、ウォーレン・バフェットによる投資も追い風となり、株価は右肩上がりでグングン上昇しました。
続いて、三井物産です。
三菱商事と同じく、コロナショックにより一時的に下落しましたが、その後力強く右肩上がりで上昇しました。
・配当・増配率
配当利回りは三菱商事:2.82%、三井物産:2.60%です。
株価の上昇により、現在の配当利回りは依然と比べるとそれほど高くありません。
両社の過去9年と2025年3月期予想の1株配当金の推移は以下の通りです。
(三井物産は株式分割後の換算額です。)
右肩上がりの素晴らしい還元姿勢。
両社とも累進配当を掲げ、積極的な株主還元姿勢を示しています。
■おわりに
総合商社大手2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。
絶好調の前期からの反動はあったものの、期初の通期予想を上回って着地した両社。
今期も総合商社の強さは健在でした。
株価上昇により配当利回りはそれほど高くなくなりましたが、累進配当を掲げている株主還元姿勢は魅力の一つです。
足元では良いニュースが目立つ総合商社ですが、資源関連の比率も高く、業績が外部環境に左右されやすい特徴があることも忘れてはいけません。
今は追い風ですが、逆風が吹いた時に投資のポジションをどうするのか、調子が良い時こそ考えておきたいですね。
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
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