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興味がある方は、以下の記事をご参照下さい。
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世界を舞台にダイナミックにビジネスを展開する総合商社。
昨年度は、資源高の追い風もあり絶好調!!
この記事では総合商社の代表格である2社、三菱商事と三井物産の決算書を比較します。
最近はロシアのサハリンⅡ事業でも話題になりましたね。
両社の違いを感じて頂き、少しでもあなたの投資の参考になれば嬉しいです。
なお、この記事では、今年8月に発表された2023年3月期第1四半期の数値を用いて比較します。
■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
・売上高
2023年3月期第1四半期の売上高・増収率は以下の通りです。
売上高は三菱商事が三井物産を46%も上回りました。
その額5.4兆円!
第1四半期でこの金額。。。
規模の大きさに驚きます。
増収率は両社とも+40%を超え、絶好調です。
通期予想は両社とも非開示です。
三井物産のセグメント別売上高は以下の通りです。
エネルギー、化学品、生活産業の3セグメントが売上高構成比20%を超え、牽引しました。
前年同期比では、エネルギー:+68.4%、化学品:+30.8%、生活産業:+44.8%とそれぞれ増収となりました。
三菱商事の事業は10セグメントに分かれますが、売上高の内訳は開示されていません。
セグメント別の純利益内訳は開示されていますので、後程説明します。
過去9年間(2014年3月期~2022年3月期)の売上高の推移は以下の通りです。
2014年3月期、2015年3月期は三井物産が上回っていましたが、2016年3月期以降は三菱商事が上回っています。
増収率をグラフにすると以下の通りです。
これだけの売上高の規模がありながら、+100%を超える年や▲50%を超える年があります。
市況によって大きく変動することがわかります。
・純利益
2023年3月期第1四半期の純利益は以下の通りです。
純利益は三菱商事が三井物産を94%も上回りました。
三菱商事の純利益は四半期利益として過去最高を更新しました。
三井物産の増益率+43.8%も素晴らしいですが、三菱商事は+184.7%と驚異的な増益となりました。
通期予想に対する進捗率は第1四半期ですでに62.8%と、今後の上方修正が期待されます。
まさに絶好調です。
三菱商事のセグメント別純利益構成比は以下の通りです。
純利益全体の48%を占める金属資源、20%を占める複合都市開発が、利益を牽引しました。
金属資源は、豪州原料炭事業における市況上昇による影響が寄与しました。
複合都市開発は、不動産運用会社の売却益によるものです。
三井物産のセグメント別純利益構成比は以下の通りです。
純利益全体の46%を占める金属資源、15%を占める機械・インフラが、利益を牽引しました。
金属資源が最も利益を稼いでいる点は、両社とも共通しています。
金属資源は、豪州石炭事業における販売価格上昇があった一方、豪州鉄鉱石事業における販売価格下落により、前年同期比はわずかに+0.7%の増益でした。
機械・インフラは、北米中心に自動車・商用車事業が好調だったこともあり、前年同期比+33.2%増益でした。
売上高を牽引したと紹介したエネルギー、化学品、生活産業の3セグメントですが、純利益の構成比ではそれぞれ9%、9%、10%と、利益貢献度は売上高に比べると高くないことがわかります。
過去9年間(2014年3月期~2022年3月期)の純利益の推移は以下の通りです。
2016年3月期は赤字でしたが、それ以外の年は黒字です。
2021年3月期のみ、三井物産が上回りましたが、それ以外の年は三菱商事が上回っています。
2022年3月期は両社とも過去最高益を記録しました。
売上高に比べると純利益は差が大きくないないように見えます。
毎年安定して右肩上がり、というわけではなく、市況や外部環境によってデコボコが大きいのが総合商社株の特徴と言えそうです。
・利益率・ROE
2023年3月期第1四半期の利益率・ROEは以下の通りです。
利益率、ROEともに三菱商事が上回りました。
過去9年間(2014年3月期~2022年3月期)の純利益率の推移は以下の通りです。
2016年3月期は両社とも赤字であったため、利益率がマイナスになっています。
上げ下げの大きな流れは両社とも極めて類似していると感じます。
■BS(貸借対照表)の比較
次に、BSを比較します。
2023年3月期第1四半期の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
資産合計は三菱商事が三井物産の1.5倍と上回りました。
一方、自己資本比率では三井物産が36.6%と、32.8%の三菱商事を上回りました。
両社のBSを図にすると以下の通りです。
貸借対照表のバランスは非常に似ています。
■CF(キャシュフロー計算書)の比較
続いて、CFを比較します。
2022年度3月期第1四半期のCFの概要は以下の通りです。
両社とも、本業から生み出すキャッシュ(営業CF)はプラスです。
投資キャッシュフローが、三菱商事はプラスであるのに対し、三井物産がマイナスであるところが、この第1四半期の特徴的なところです。
キャッシュフローの概要を図にすると以下の通りです。
まずは三菱商事です。
続いて三井物産です。
三菱商事の投資キャッシュフローがプラスの主な要因は「事業の売却による収入」(+114,381百万円)です。
純利益の内訳で触れた複合都市開発セグメントにおける不動産運用会社の売却などによるものです。
三菱商事の財務キャッシュフローのマイナスが目立ちますが、主な要因は「短期借入金等の増減」(▲131,799百万円)、「長期借入債務等の返済」(▲227,539百万円)、「配当金の支払」(▲116,658百万円)です。
借入金を返済することで財務体質を改善させると同時に、株主還元を行っていることがわかります。
■その他の項目(株価、配当など)
株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
・PER・株価
三菱商事は6.8倍、三井物産は6.1倍と、両社とも非常に低い水準です。
一般的にPER15倍が割安の目安とされますが、総合商社はPERがとても低いことがわかります。
両社の株価の推移は以下の通りです。
まずは三菱商事です。
コロナショック後の2020年4月には一時2,100円を割るまで下落しましたが、その後資源価格の高騰などを背景に業績は絶好調、株価も右肩上がりでグングン上昇しました。
一旦上昇の勢いは落ち着き、移動平均線と節目の4,000円を下に割っていくのか、注目です。
続いて、三井物産です。
三菱商事と同じく、コロナショックにより一時的に下落しましたが、その後力強く右肩上がりで上昇しました。
移動平均線と節目の3,000円を下に割っていくのか、注目です。
・配当
配当性向は三菱商事がわずかに上回り、配当利回りは三井物産がわずかに上回りました。
両社とも配当性向は25%前後と無理のない水準で、配当利回りは3.7%を超える高配当です。
積極的な株主還元の姿勢がみてとれます。
三菱商事では、2025年3月期までの累進配当を表明するとともに、自社株買いも含めて30~40%程度の総還元性向を掲げています。
株主還元姿勢の強さは総合商社株の大きな魅力です。
■おわりに
総合商社大手2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。
目下絶好調という両社。
特に三菱商事の好調ぶりが際立っているように感じました。
両社とも配当利回り3.7%以上で、高配当銘柄として非常に魅力的です。
私もいずれ総合商社株をポートフォリオに加えたいと考えています。
過去からの売上高・純利益の推移を見てわかる通り、総合商社の業績は市況や外部環境によって大きく変動します。
最近ではロシアのサハリンⅡをめぐる評価減のニュースもでていましたが、様々な国で事業を展開する分、そうしたリスクも多くあるのが総合商社の特徴です。
絶好調がいつまでも続くわけはなく、絶好調の翌年度以降、前期比で減速感が出れば株価が下がってくる可能性は十分にあると思いますので、来年、再来年のエントリーをターゲットに、観察を続けていきます。
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
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よろしければご覧ください!
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