【更新記事あり!】
本記事以降の決算発表についても記事を書いています!
興味がある方は、以下の記事をご参照下さい。
最新の決算比較 こちらからどうぞ!
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皆さん、旅行は好きですか?
旅行に行く時、どのように予約をしますか?
Twitterで、旅行の際の予約方法についてアンケートを取ったところ、結果は以下の通りでした。
「全て自分でオンラインで予約!」という方が9割超と圧倒的に多いということが改めてわかりました。
旅行会社もこれからは店舗型ではなく、オンライン型で顧客のニーズをキャッチしていかないと生き残っていけない時代なのかもしれません。
この記事では、私がオンライン旅行予約のプラットフォームとして注目しているエアビーアンドビー(以下、「エアビー」)とエクスペディアの2社の決算書を比較します。
複数の会社の決算書を比較することで、その会社の個性がよりわかるようになります。
両社の違いを感じて頂き、少しでもあなたの投資の参考になれば嬉しいです。
なお、この記事では、主に今年11月に発表された2022年7~9月期決算(第3四半期決算)の数値を用いて比較します。
■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
・売上高
2022年7~9月期(第3四半期)及びQ3累計の売上高・増収率は以下の通りです。
売上高はエクスペディアが約25%、エアビーを上回りました。
両社とも前年同期(2021年7~9月)比で+20%を超える増収となりました。
過去4年間(2018年12月期~2021年12月期)と今期Q3の売上高の推移は以下の通りです。
2020年はコロナ禍で人流が制限され大きく落ち込みましたが、そこからの回復が見えてきています。
今期はまだQ3ですが、両社とも前年2021年の売上高を上回りました。
エアビーに関してはコロナ前の水準も上回り、過去最高を更新しています。
・営業利益
2022年7~9月期(第3四半期)及びQ3累計の営業利益は以下の通りです。
営業利益はエアビーが約61%、エクスペディアを上回りました。
両社とも前年同期(2021年7~9月)比で+40%を超える増益となりました。
過去4年間(2018年12月期~2021年12月期)と今期Q3の営業利益の推移は以下の通りです。
両社ともQ3時点で直近4年間の営業利益を上回りました。
利益の面でもコロナ禍で打撃を受けた2020年12月期からの回復が表れています。
特にエアビーはこれまでにない水準の営業利益を記録しています。
・純利益
2022年7~9月期(第3四半期)及びQ3累計の純利益は以下の通りです。
純利益はエアビーが約2.5倍、エクスペディアを大きく上回りました。
両社とも前年同期(2021年7~9月)比で+30%を超える増益となりました。
Q3累計では前期の赤字から今期は黒字転換しました。
過去4年間(2018年12月期~2022年12月期)と今期Q3の純利益の推移は以下の通りです。
過去4年間エアビーの純利益は赤字が続いていました。
2020年12月に上場しましたが、上場来初の通期黒字化が見えてきています。
しかもエクスペディアを大きく上回る利益を残しており、今後の飛躍が期待できそうです。
・利益率・ROE
2022年7~9月期(第3四半期)及びQ3累計の利益率・ROEは以下の通りです。
売上高営業利益・売上高純利益率ともに、エアビーが倍以上の差をつけて上回りました。
ROEも37.9%と非常に高く、収益性の高さを示しました。
Q3累計で、両社が原価や販管費の何にお金をかけているか、売上高対比で比べます。
エクスペディアの売上原価(Cost of revenue:1,127百万ドル)は売上高の18%です。
販売促進費(Selling and marketing:3,177百万ドル)は売上高の50%です。
エアビーの売上原価(Cost of revenue:1,154百万ドル)は売上高の18%です。(エクスペディアと同水準。)
販売促進費(Selling and marketing:1,108百万ドル)と商品開発(Product development:1,104百万ドル)がそれぞれ売上高の17%です。
エクスペディアがかなり大きな割合を販売促進費に投じており、これが利益率の差として表れています。
もちろん、販売促進費を積極的に投じているからこそ売上高を伸ばせている面もありますが、販売促進費をかけずに高い利益率を保ちながら高成長を実現しているエアビーの方が、より魅力的に感じます。
売上高営業利益率の推移をグラフにすると以下の通りです。
これまでエアビーは利益が出ていませんでしたので利益率もエクスペディアを下回っていましたが、2021年12月期に逆転し、今期Q3時点ではその差を広げています。
参考までに、日本の代表的な旅行会社のコロナ前の営業利益率を調べてみると、以下の通りです。
営業利益率は0.5~2.8%と、非常に低いです。
伝統的な店舗型の旅行代理店は、その分人件費や店舗費用などのコストが発生します。
冒頭のアンケ―トの通りオンラインで自ら予約する人が増えている現在、店舗にかかるコストを回収し利益を残すだけの売上を稼いでいくのは難しいのかもしれません。
オンラインプラットフォームである、エクスペディア、エアビー両社の利益率の高さを感じることができます。
■BS(貸借対照表)の比較
2022年7~9月期(第3四半期)の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
資産合計はエクスペディアがエアビーを、約36%上回りました。
一方で自己資本、現金はエアビーの方が多く、自己資本比率もエアビーの方が24ポイントも高いです。
有利子負債はエクスペディアがエアビーの3.1倍抱えています。
財務の安全性はエアビーの方が良好です。
両社のBSを図にすると以下の通りです。
短期的な安全性を示す流動比率(流動資産÷流動負債×100%)は、エクスペディアが83%、エアビーが185%です。
安全の目安が100%以上と言われますので、100%を割っているエクスペディアは不安が残ります。
両社は固定資産の割合が大きく異なります。
エクスペディアの固定資産のうち56%はM&Aによるのれん(Goodwill:7,109百万ドル)です。
■CF(キャシュフロー計算書)の比較
続いて、CFを比較します。
2022年1~9月累計(第3四半期累計)のCFの概要は以下の通りです。
両社とも、本業から生み出すキャッシュ(営業CF)はプラスです。
CFの概要を図にすると以下の通りです。
まずはエクスペディアです。
財務CFの主な内容は借入金の返済(Payment of long-term debt:▲2,141百万ドル)です。
「有利子負債はエクスペディアがエアビーの3.1倍抱えています。」と上記で説明しましたが、コロナ禍で急増した有利子負債を徐々に減らす動きがみられます。
エクスペディアの現金・有利子負債の四半期推移は以下の通りです。
続いてエアビーです。
■その他の項目(株価、配当など)
株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
・PER・株価
PERは投資を検討する際に気になることの一つです。
エクスペディアは36倍、エアビーは39倍と、ほぼ同水準です。
両社の株価の推移は以下の通りです。
まずはエクスペディアです。
2020年のコロナショックでは、旅行需要の蒸発により、株価は40ドルまで急激に下落しました。
その後は金融相場の後押しや需要回復期待から上昇し今年2月には上場来高値217ドルをつけましたが、相場全体の地合いが崩れたこと、22Q1、22Q3と四半期赤字が続いたこともあり、現在は100ドルを切る水準まで下落しています。
続いて、エアビーです。
コロナ禍の2020年12月に上場してまだ2年弱、厳しい事業環境の中ということもあり、株価はさえない展開が続いています。
現在の株価は、2021年2月の最高値219ドルからは約57%下落した水準です。
今期は通期黒字化が見えてきていますし、旅行需要の回復も進んでいくと思われますので、今後の株価の回復が期待されます。
・配当
両社とも無配です。
インカムゲインではなく、キャピタルゲインを狙った投資戦略をたてていく必要があります。
■おわりに
米・オンライン旅行プラットフォーム2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。
両社についてはそれぞれ個別に決算記事を書いていますので、よろしければこちらもご参照下さい!
・【エクスペディア】22/11/3決算発表内容と私の投資戦略
・【エアビーアンドビー】22/11/1決算発表内容と私の投資戦略
私はエクスペディア株を持っています。
今回の比較記事を通してエアビーの成長性、利益率の高さ、財務の安全性、いずれもとても魅力を感じました。
エアビーについても狙っていきたいと、改めて感じました。
今後世界的に人流が回復し、ますます両社が成長していくことを期待しています。
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
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