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興味がある方は、以下の記事をご参照下さい。
最新の決算比較 こちらからどうぞ!
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複数の会社の決算書を比較することで、その会社の個性がよりわかるようになります。
今日は日本の空の移動を支える2社、JALとANAを比較します。
皆さんはどちらがお好みですか?
航空会社への投資を検討している投資家さんの参考になれば幸いです。
なお、この記事では、今年4/27(木)、5/2(火)に発表された2023年3月期の数値を用いて比較します。
JALとANAの比較は2023年3月期第1四半期以来となりますが、JALの業績予想下方修正により、随分印象が変わりました。
年初の業績予想は鵜呑みにしてはいけないな、と感じる決算でした。
■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
・売上高
2023年3月期の売上高・増収率は以下の通りです。
増収率ではJALの方が勝りましたが、売上高はANAが上回りました。
「通期予想」は年度当初に開示したもの、「達成率」は年度当初の通期予想に対する達成率です。
ANAが通期予想を上回った一方で、JALは未達でした。
JALの売上高の内訳を見ると、国際旅客収入が前年比+507%(約6倍)の4,175億円まで回復し、前年比+91.9%の国内旅客収入とともに牽引しました。
どちらも19年度比では▲14~15%ほどの水準と、完全回復までもう一息、というところです。
四半期ごとの推移でみると、Q4(1~3月)でフルサービスキャリアの売上高が減速している点は気になります。
季節波動や日数の影響はあると思いますが、訪日外国人数は着実に増加していることを考えると、やや物足りない印象です。
参考:インバウンド関連銘柄も選別が重要!2023年3月の訪日外客数を分析
ANAの売上高の推移は以下の通りです。
着実に回復していることがわかります。
JALと同じくQ4は売上高がQ3と比べて減速しています。
貨物郵便、国内旅客が減少しています。
ただ、国際旅客はしっかり伸びており、旅客合計では増加している点は、JALとの違いです。
過去12年間(2012年3月期~2023年3月期)と2024年3月期予想の売上高の推移は以下の通りです。
売上高は常にANAが上回っています。
2021年3月期、2022年3月期は両社ともコロナ禍の影響を受け大幅に売上高が落ち込みましたが、だんだんと回復してることが見て取れます。
・純利益
2023年3月期の純利益は以下の通りです。
純利益は両社とも前期の赤字から黒字転換しましたが、その額はANAが倍以上の差をつけて、上回りました。
「通期予想」は年度当初に開示したもの、「達成率」は年度当初の通期予想に対する達成率です。
ANAが通期予想の4倍以上と大きく上回った一方で、JALは76.5%と大幅未達でした。
年度当初の予想ではJALが倍以上の純利益を叩き出す発表でしたが、ふるいませんでした。
2月のQ3決算発表時に、純利益の予想を45,000百万円から25,000百万円に大きく下方修正しました。
その要因として、以下の点が挙げられていました。
・全国旅行支援再開による需要増効果が限定的
・航空貨物の需給バランスの緩和により国際貨物収入も想定下回る
以下はQ1時点での両社の比較ですが、通期予想で上回っているJALが赤字で、ANAは黒字でした。
Q1の時点で通期を予測するのは難しいですが、
・ANAの通期予想、もしかしたら保守的すぎるのかも
といった違和感を持つ必要がありましたね。
結果的にはJALは強気すぎ、ANAは保守的すぎ、という着地になりましたが、いずれにしても年度当初の業績予想は鵜呑みにしてはいけないな、と痛感しました。
過去12年間(2012年3月期~2023年3月期)と2024年3月期予想の純利益の推移は以下の通りです。
売上高とは対照的に、過去多くの年で純利益はJALが上回ってきました。
ただ、2023年3月期はANAが上回りました。
2024年3月期の見通しですが、JALは59.8%増益の55,000百万円、ANAは▲10.6%減益の80,000百万円と、増益・減益が対照的な予想となりました。
ANAは、売上高が増収、営業利益も増収である一方で、純利益が減益予想となっています。
おそらく2023年3月期に計上した一過性の営業外収益(資産売却益:7,854百万円、固定資産受贈益:5,043百万円、雇用調整助成金:5,043百万円、など)、特別利益(固定資産売却益:1,587百万円、など)の反動と思われます。
いずれにしても、通期予想を鵜呑みにせず、今後の決算発表を丁寧に観察していきましょう。
■BS(貸借対照表)の比較
次に、BSを比較します。
2023年3月期の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
資産合計はANAの方が大きいですが、JALは現金が多く、資産に対する有利子負債の比率が少なく、自己資本比率が高く、財務の安全性はJALが上回っています。
両社のBSを図にすると以下の通りです。
短期的な安全性を示す流動比率(流動資産÷流動負債×100%)は、JALが137.8%、ANAが175.6%と、両社とも目安の100%を上回っています。
■CF(キャシュフロー計算書)の比較
続いて、CFを比較します。
2023年3月期のCFの概要は以下の通りです。
両社とも、本業から生み出すキャッシュ(営業CF)はプラスです。
キャッシュフローの概要を図にすると以下の通りです。
まずはJALです。
続いてANAです。
■その他の項目(株価、配当など)
株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
・PER・株価
2024年3月期予想の純利益で計算したPERは、JAL:44.3倍、ANA:17.5倍でした。
22Q1時点の比較は以下の通りです。
強気な見通しをしていたJALのPERは26倍、保守的な見通しをしていたANAのPERは62.3倍でした。
純利益が正常時に戻っていない中でしたのでPERは参考程度に見るのがいいとは思っていましたが、それにしても随分景色が変わった印象です。
PERは投資の切り口としてとても参考になりますが、通期予想一つで数値が大きく変わります。
一時点を切り取って投資判断を下して、後悔しないように気をつけたいですね。
両社の株価の推移は以下の通りです。
まずはJALです。
続いて、ANAです。
両社ともチャートの形は極めて似ており、2020年のコロナショックで大きく下落し、その後はコロナ前の水準にはなかなか戻れないまま2年半ほど経過して今に至ります。
・配当
厳しい経営状況のため、2022年3月期は両社とも無配でしたが、JALが一早く復配しました。
2023年3月期は25円、2024年3月期は40円の配当を予定しています。
航空業界は景気や外部環境に左右されやすく、安定した配当を狙いたい場合はあまり手を出すべき業界ではなさそうです。
■おわりに
航空大手2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。
両社ともに増収、純利益は黒字転換と、コロナ禍からの回復が表れましたが、純利益の着地には大きな差がありました。
強気な予想をしていたJAL。
保守的な予想をしていたANA。
1Qの進捗を見た時点でその違和感に気づく必要がありましたね。
参考:【決算書比較】JALとANA、あなたはどちらがお好み?
通期業績予想を盲信することがいかに危険か、ということをJALの決算から感じた決算でした。
また同時に、1社の決算だけでは気づけないことも、同業他社と比較することで気づける、ということを感じました。
今後も投資対象として考えている会社とその競合会社の決算を比較し、投資の精度を高めていきたいです。
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
★★私が株式投資において参考にした書籍を以下の記事にまとめています!★★
よろしければご覧ください!
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