個別株投資で毎年資産+10%を目指し、気になっている銘柄の決算発表内容を分析し、今後の投資戦略について私なりの視点で書いていきます。
株式投資を学ぶならファイナンシャルアカデミー■本日のチェック銘柄
今日チェックするのは米・スポーツ用品大手のナイキ(ティッカーシンボル:NKE)です。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)上場で、決算期は5月です。
SBI証券お客様サイト内の銘柄サマリー情報より数値を抜粋すると、時価総額は1,495億ドル、従業員数は79,100人です。
多くのスポーツ選手に愛されている世界的なブランドです。
スポーツをしている方に限らず、私たちの生活にとても馴染みのある企業ということで、注目しています。
なお、現在私はナイキの株を保有していません。
■決算発表内容の概要
2022/9/29(木)に発表した2022年6~8月期(第1四半期)決算の主な内容は以下の通りです。
【各数値の定義】(決算書のどの数値からとっているか)
売上高:Revenues
営業利益:”Gross profit” - “Total selling and administrative expense”
純利益:Net income
資産合計:Total assets
自己資本:Shareholders’ equity
現金:Cash and equivalents
有利子負債:Current portion of long-term debt, Long-term debt
■決算発表内容分析のものさし
決算発表内容について、私は主に①成長性、②収益性、③安全性、④キャッシュ創出力、の4つの観点からチェックをしています。
それぞれの観点について、主な指標とその計算方法、優秀と認定する目安は以下の通りです。
優秀と認定する目安をクリアした項目が多い銘柄ほど、買いたい銘柄、保有し続けたい銘柄ということになります。
★成長性
【主な指標】
増収率、増益率(営業利益・純利益)
【計算方法】
増収率(%)=(今期の売上÷前期の売上-1)×100
増益率(%)=(今期の利益÷前期の利益-1)×100
【優秀と認定する目安】
増収率、増益率ともに+10%以上
★収益性
【主な指標】
売上高営業利益率、売上高純利益率、ROE(自己資本利益率)
【計算方法】
売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100
売上高純利益率(%) =純利益 ÷売上高×100
ROE(%) =純利益÷自己資本×100
※四半期決算時は純利益を年換算し算定
【優秀と認定する目安】
売上高営業利益率:15%以上
売上高純利益率 :10%以上
ROE :15%以上
★安全性
【主な指標】
自己資本比率、現金>有利子負債か
【計算方法】
自己資本比率(%)=自己資本÷資産合計×100
【優秀と認定する目安】
自己資本比率:30%以上80%以内
現金>有利子負債であること
※ただし、一概に自己資本比率が高ければいいというわけではなく、有利子負債が多いとダメでもなく、業態や企業の成長フェーズによって個別に評価する必要がある、と考えています。
★キャッシュ創出力
【主な指標】
営業CFがプラスか、営業CF>営業利益か
【優秀と認定する目安】
営業CFがプラスであること
営業CF>営業利益であること
■決算発表内容分析
それでは、上記のものさしに沿って、実際に決算発表内容を分析していきます。
●成長性のチェック
Q1売上高は前年同期比+3.6%、営業利益は同▲20.2%、純利益は同▲21.7%でした。
増収減益でのスタートでした。
特に利益面が非常に苦戦しています。
その要因は、物流費の高騰(elevated freight and logistics costs)、値下げ(markdowns)、為替(unfavorable changes in net foreign currency exchange rates)です。
売上高の95%を占めるNIKEブランドの売上高を地域別に見ると以下の通りです。
(残りの5%はConverseブランドです。)
主力は46%を占める北米(North America)です。
北米市場は、前年同期比+13%と成長しました。
前年度通期の北米の比率は41%でしたので、その比率が高まりました。
中国市場の低迷、為替がドル高になったことの影響が大きいです。
北米に続くのが、28%を占めるヨーロッパ・中東・アフリカ(Europe, Middle East & Africa)です。
現地通貨建では+17%と成長したにも関わらず、ドル建に換算にすると+1%と、為替(ドル高ユーロ安)の影響が色濃く出ました。
ゼロコロナ政策が続く中華圏(Greater China)は、前期Q4は▲19.2%、通期では▲9.0%でしたが、このQ1も▲16.4%と苦戦が続いています。
製品別の売上高構成比は以下の通りです。
運動靴(Footwear)が全体の67%を占めています。
直販(NIKE Direct sales)は+8%増加しました。
過去11年(2012年5月期~2022年5月期)と今期Q1の増収率の推移は以下の通りです。
2021年5月期の増収率が高いのは、前年2020年5月期(2019年6月~2020年5月)がコロナの影響でブレーキした反動です。
+5~10%の年が多く、それと比べると今年はやや弱めのスタートであることがわかります。
為替の動向、中国の動向、自社でコントロールできない外的要因を抱える難しい1年になりそうです。
●収益性のチェック
Q1の売上高営業利益率は13.4%、売上高純利益率は11.6%でした。
売上高営業利益率は目安の15%には届きませんでしたが、売上高純利益率は目安の10%を上回りました。
前年通期の利益率はそれぞれ14.3%、12.9%でしたので、やや利益率が低下しています。
過去12年(2011年5月期~2022年5月期)と今期Q1の利益率の推移は以下の通りです。
2018年5月期は純利益が前年比▲54.4%と大きく落ち込んだ年でした。
2020年5月期は新型コロナウイルスの影響もあり減収減益と苦しい1年でした。
それ以外の年は十分に高い利益率を残しています。
直近2年間と比べると利益率はやや低下気味ですが、過去10年超の推移を見れば、現在も決して悪い利益率ではありません。
ROEは37.1%でした。
株主資本を非常に効率的に利益に結び付ける経営ができていることを示しています。
●安全性のチェック
自己資本比率は38.5%でした。
保有している現金は7,226百万ドル、有利子負債は9,422百万ドルと、有利子負債が現金を上回りました。
過去4年(2019年5月期~2022年5月期)と今期Q1の貸借対照表の推移は以下の通りです。
一見すると、流動資産が負債合計を上回り、安全性は大変高く見えます。
しかし、流動資産に含まれる在庫(Inventories)が積みあがっていることには注意が必要です。
このQ1では、流動資産の33%(9,662百万ドル)が在庫です。
2018年Q1(2017年6~8月)以来の在庫の四半期推移は以下の通りです。
2020年Q4(2020年3~5月)はコロナ感染拡大により在庫が増えましたが、現在の在庫はその時を31%も上回っています。
世界的なインフレによる消費減退の影響がでているようです。
今後不良在庫になるようであれば、業績にマイナスの影響をもたらしますので、注意が必要です。
同期間の現金、有利子負債の四半期推移は以下の通りです。
コロナ禍以来有利子負債が大きく増加し、現在も同水準の借入が続いています。
一方で現金は直近3四半期で下落基調となっており、少し心配です。
●キャッシュ創出力のチェック
キャッシュ・フロー計算書は開示がないため、割愛します。
■業績予想に対する進捗度
SBI証券お客様サイト内の「財務詳細」情報に記載されている今期業績予想に対する進捗度をチェックします。
業績予想に対する進捗度は、売上高:25.5%、純利益:25.7%でした。
今期通期の純利益は▲5.5%の減益予想となっています。
■来期の業績予想から見る将来成長性
SBI証券お客様サイト内の「財務詳細」情報より、来期の業績予想をチェックします。
今期の業績予想を起点に、来期の成長性を見ていきます。
来期の成長率は、売上高:+9.8%、純利益:+19.3%と予想されています。
純利益は今期が減益となる反動もあり、+20%に迫る増益と予想されています。
■株価水準とチャートの動き
9/30(金)の終値は83ドルです。PERは26倍です。
過去5年の株価の動き(週足)は以下の通りです。
過去5年、右肩上がりで株価は上昇してきましたが、昨年11月以来株価は調整局面に入りました。
世界的なインフレによる消費減退懸念もあり、今回の決算発表翌日9/30(金)の株価は▲12.8%と大きく下落しました。
現在の株価は昨年11月の最高値179ドルから▲53%ほど下落した水準です。
■私の投資戦略
以上の分析内容を簡単に表に整理すると、以下のようになります。
決算発表翌日に株価が▲12.8%と大幅下落したところに、投資家の不安心理がよくあらわれました。
中国で続くゼロコロナ政策継続、世界的なインフレによる消費減退懸念、非常に厳しい環境の中でのスタート。
売上高は増収となったものの、営業利益・純利益は物流費の高騰、値下げ、為替(ドル高)により▲20%を超える大幅減益となり、前期末からの減速の流れが継続しました。
SBI証券サイト上、前期末時点では今期は増収増益予想となっていましたが、現在は増収減益予想に変わっています。
ROEをはじめ収益性は高く、世界的なブランド力もあることから、狙っていきたい銘柄で、買付目安として考えていた100ドルを大きく割ってきました。
ただ、現在の厳しい環境はしばらく続くと考えており、3ヶ月後のQ2決算後に再度株価が下がる可能性もあるのではないかと考えています。
コロナショックの2020年3月には60ドルまで下落しましたので、そのあたりまで下落することも視野に、しばらく様子見しようと思います。
以上が私の戦略です。
■おわりに
私はだいたい25銘柄程度の注目銘柄を決めて、決算発表内容と会社四季報を見比べながら、上記のような観点で継続的に観察しています。
そして5年で株価2倍が期待できる銘柄を、いいタイミングで買うことを目指しています。
上記の銘柄を推奨するわけではありませんが、銘柄選択の視点や考え方など、読者の皆さんの参考になれば嬉しいです。
毎年資産+10%達成を目指して、引き続き頑張ります!
ということで、本日は以上です!
お読み頂きありがとうございました!
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■参考:同社に関する過去の記事
・【ナイキ】22/6/27決算発表内容と私の投資戦略
※22/6/27(月)に発表した2022年3月~5月期(第4四半期)決算についての記事です。
・【ナイキ】22/3/21決算発表内容と私の投資戦略
※22/3/21(月)に発表した2021年12月~2022年2月期(第3四半期)決算についての記事です。
・【ナイキ】21/12/20決算発表内容と私の投資戦略
※21/12/20(月)に発表した2021年9月~11月期(第2四半期)決算についての記事です。
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