個別株投資で毎年資産+10%を目指し、気になっている銘柄の決算発表内容を分析し、今後の投資戦略について私なりの視点で書いていきます。
株式投資を学ぶならファイナンシャルアカデミー■本日のチェック銘柄
今日チェックするのは迷惑情報フィルタ事業を展開するトビラシステムズ(証券コード:4441)です。
東証プライム市場上場で、決算期は10月です。
プライム市場ではありますが、上場維持基準のうち「流通株式時価総額」の基準を満たしておらず、基準の適合に向けた計画書を提出しての暫定的なプライム市場区分となっています。
直近の四季報より数値を抜粋すると、時価総額は104億円、従業員数は54名です。
同社が掲げる企業理念は「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」です。
私がこの会社に注目している理由は
①迷惑電話・特殊詐欺という社会問題を減少させる、社会貢献性の高いビジネスだから
②今後高齢化が進む日本において、ニーズがますます増えると考えられるから
です。
現在私はトビラシステムズの株は保有していません。
■決算発表内容の概要
2022/12/9(金)に発表した2022年10月期第4四半期決算の主な内容は以下の通りです。
■決算発表内容分析のものさし
私は主に①成長性、②収益性、③安全性、④キャッシュ創出力、の4つの観点からチェックをしています。
それぞれの観点について、主な指標とその計算方法、優秀と認定する目安は以下の通りです。
優秀と認定する目安をクリアした項目が多い銘柄ほど、買いたい銘柄、保有し続けたい銘柄ということになります。
■決算発表内容分析
それでは、上記のものさしに沿って、実際に決算発表内容を分析していきます。
●成長性のチェック
売上高は前年同期比+18.0%、営業利益は同▲6.7%、純利益は同▲16.6%でした。
同社の売上高の75.6%を占めるモバイル向け迷惑情報フィルタサービスは、前年比+12.2%増加しました。
トビラフォンBizなど、今後の注力事業であるビジネスフォン向けフィルタサービスは、前年比+181.1%と大きく伸びました。
売上高に占める比率は11.0%とまだ小さいですが、今後成長が継続するのか、注目です。
過去5年(2018年10月期~2022年10月期)の増収率の推移は以下の通りです。
15%を超える増収を続けています。
営業利益・純利益は、当初の計画通り減益となりました。
人材採用による人件費の増加、280blocker吸収合併によるのれん償却の増加などが減益の要因です。
●収益性のチェック
売上高営業利益率は32.2%、売上高純利益率は19.1%でした。
いずれも目安の15%、10%を上回り、高い収益性を示しました。
過去6年(2017年10月期~2022年10月期)の利益率の推移は以下の通りです。
今期も十分に高い利益率ではあるものの、人件費やのれん償却費の増加により、売上高営業利益率が低下傾向にあることは気になります。
ROEは20.1%と、こちらも目安の15%を上回りました。
●安全性のチェック
自己資本比率は64.1%でした。
現金1,436百万円に対し、有利子負債は296百万円と、現金が有利子負債を上回りました。
過去5年(2018年11月期~2022年10月期)の貸借対照表の推移は以下の通りです。
流動資産が負債合計を大きく上回り、短期的な財務の安全性に問題はありません。
2021年10月期から固定資産と固定負債が大きくなっています。
固定資産は合同会社280blocker買収によるのれんの増加によるものです。
固定負債は長期借入金の増加によるものです。
のれんの償却に伴い、営業利益の減少、売上高営業利益率の低下が今期見られましたので、今後のれん償却費用を吸収するだけの売上成長を継続できるのか、注目したいと思います。
●キャッシュ創出力のチェック
営業CFは+641百万円と、キャッシュインとなりました。
営業利益541百万円を上回りました。
キャッシュフローの概要は図にすると、以下の通りです。
本業でしっかりキャッシュを生み出し(営業CF)、その範囲内で有形・無形固定資産の取得(投資CF)、株主還元(配当金の支払い)や借入金の返済(財務CF)を行っており、健全なサイクルです。
■業績予想(会社発表)に対する進捗度
業績予想に対する達成度は、売上高:102.8%、営業利益:105.4%、純利益:96.7%でした。
純利益は100%に若干届きませんでしたが、概ね計画通りで着地しました。
■来期の業績予想(会社四季報情報)から見る将来成長性
会社四季報から、来期の業績予想を見ていきます。
今期の実績からの成長率は売上高:+24.1%、営業利益:+52.0%、純利益:+50.2%と大幅な増収増益となっています。
しかし、今回の決算発表で会社から発表された来期業績予想は以下の通りで、四季報よりも弱い予想となっています。
■株価水準とチャートの動き
12/13(木)の終値は900円。来期予想から計算するPERは24倍です。
過去5年間の株価の動き(週足)は以下の通りです。
2019年4月の上場後、株価は急激に上昇しましたが、6月に上場来高値3,746円をつけてからは一転、下落を続けました。
2020年のコロナショック後、一旦盛り返す動きをみせましたが、2020年6月以降もずるずると下落を続けました。
直近半年程度で株価はだいぶ回復し、移動平均線を上に抜けて推移していましたが、今回の決算発表を受けて、12/12(月)は1日で▲19%と急落しました。
■私の投資戦略
以上の分析内容を簡単に表に整理すると、以下のようになります。
3ヶ年の中期経営計画の初年度は、計画通り増収減益で着地しました。
過去6年(2017年10月期~2022年10月期)と来期予想(会社発表)の売上高・営業利益・純利益・EPSの推移は以下の通りです。
今期は減益となりEPSも下落しましたが、来期は持ちなおす動きになっています。
ただ、来期の予想はもともとの中期経営計画と比べると弱気です。
売上高はほぼ計画と同水準ですが、営業利益は中期経営計画より▲23%低い予想で、増益率は+10.9%となってます。
昨年12月に修正された中期経営計画では以下のように計画されていました。
売上高はFY2021を起点に年平均成長率約20%、営業利益はFY2022を起点に年平均成長率約52%、という計画です。
特に営業利益については、過去の増益率の実績から、約52%増益というのはあまり現実的ではなく、プライム市場に区分されるための過度に強気な計画ではないかと当時感じました。
今回発表された業績予想を見て、中期経営計画の数値を鵜呑みにしてはいけないと改めて感じました。
同社の魅力は事業の意義、オリジナリティ、参入障壁の高さ、それらがもたらす利益率の高さだと思っていますが、来期予想では売上高営業利益率が低迷する予測となっていることも気掛かりです。
上記の利益率の低迷以外に、同社株の買付に懸念を抱いている理由は以下の5点です。
・売上高・営業利益、いずれの面からも、中期経営計画達成の蓋然性に疑問を感じているから(プライム市場に区分されるための過度に強気な計画に見える)
・好調な業績であるにもかかわらず、市場区分決定をめぐるタイミングで財務の要でもある前CFOが退任となったことに違和感があったから
・事業とのシナジーを感じない投資に違和感があったから
・将来的な配当の金額に不安感があるから(業績悪化でさらっと減配しそう、それによって株価が下落することがありそう)
社会的に意義ある事業を展開しており応援したいと感じる一方で、上記の通り自分の中で引っ掛かることが多いため、しばらく様子見を継続する方針です。
買付目安600円はさすがに低すぎるかもしれませんが、安易に手は出さず、観察を続けます。
不安が少しずつ解消され、その時に株価が割安であると感じられたら、改めてエントリーを検討しようと思います。
待つのも相場。見るのも相場。
です。
以上が私の戦略です。
■おわりに
私はだいたい25銘柄程度の注目銘柄を決めて、決算発表内容と会社四季報を見比べながら、上記のような観点で継続的に観察しています。
そして5年で株価2倍が期待できる銘柄を、いいタイミングで買うことを目指しています。
上記の銘柄を推奨するわけではありませんが、銘柄選択の視点や考え方など、読者の皆さんの参考になれば嬉しいです。
毎年資産+10%達成を目指して、引き続き頑張ります!
ということで、本日は以上です!
お読み頂きありがとうございました!
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■参考:同社に関する過去の記事
・【トビラシステムズ】22/9/9決算発表内容と私の投資戦略
※22/9/9(金)に発表した2022年10月期第3四半期決算についての記事となります。
・【トビラシステムズ】22/6/10決算発表内容と私の投資戦略
※22/6/10(金)に発表した2022年10月期第2四半期決算についての記事となります。
・【トビラシステムズ】22/3/10決算発表内容と私の投資戦略
※22/3/10(木)に発表した2022年10月期第1四半期決算についての記事となります。
・【トビラシステムズ】21/12/10決算発表内容と私の投資戦略
※21/12/10(金)に発表した2021年10月期第4四半期決算についての記事となります。
・【銘柄研究!】本日の気になる銘柄~トビラシステムズ
※21/9/10(金)に発表した2021年10月期第3四半期決算についての記事となります。
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