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興味がある方は、以下の記事をご参照下さい。
最新の決算比較 こちらからどうぞ!
ネットで注文した商品が当たり前のように翌日に届くこの時代。
その物流を支えるのがヤマト運輸や佐川急便といった物流会社です。
この記事では、物流大手2社のヤマト(ヤマトホールディングス株式会社)と佐川(SGホールディングス株式会社)の決算書を比較します。
複数の会社の決算書を比較することで、その会社の個性がよりわかるようになります。
両社の違いを感じて頂き、少しでもあなたの投資の参考になれば嬉しいです。
なお、この記事では、10/27(金)、11/1(水)に発表された2024年3月期決算第2四半期決算の数値を用いて比較します。
■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
・売上高
2024年3月期第2四半期の売上高・増収率は以下の通りです。
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売上高はヤマトが上回りました。
両社とも減収で、特に佐川は▲14.4%と苦戦しました。
期初の通期予想に対する進捗率はヤマト:47.6%、佐川:46.6%です。
両社とも、通期業績予想の下方修正を発表しました。
ヤマトは約▲2%(1,820,000百万円→1,785,000百万円)、佐川は約▲3%(1,380,000百万円→1,340,000百万円)、それぞれ下方修正しました。
ヤマトの売上高構成比は以下の通りです。
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リテール部門は前年同期比+2.7%増収した一方、法人部門は▲2.6%の減収でした。
佐川の売上高構成比は以下の通りです。
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主力のデリバリー事業は前年比▲2.4%、ロジスティクス事業は同▲46.5%と、ロジスティクス事業の低迷が響きました。
米国での消費者マインドの停滞等により海上・航空貨物が減少しました。
スリランカに本社を置く連結子会社「エクスポランカ社」(EXPOLANKA HOLDINGS PLC)の売上高は前年同期比▲65.4%(1,502億円→520億円)と大きく減速しました。
過去7年(2017年3月期~2023年3月期)とこのQ2の売上高の推移は以下の通りです。
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佐川が年々売上高を伸ばし、両社の差を縮めてきましたが、2023年3月期はその差が広がりました。
通期予想は佐川が前年同期比▲6.6%、ヤマトが同▲0.9%ですので、今期も差が広がりそうです。
・営業利益・純利益
2024年3月期第2四半期の営業利益・純利益は以下の通りです。
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営業利益・純利益ともに佐川が大きく上回りました。
ただ、両社とも前年同期比で大幅な減益となっています。
業績予想に対する進捗率も低く、ヤマトは営業利益予想を80,000百万円から65,000百万円に、純利益予想を58,000百万円から52,000百万円に、下方修正。
佐川は営業利益予想を100,000百万円から91,500百万円に、純利益予想を68,000百万円から61,500百万円に、下方修正しました。
過去7年(2011年3月期~2023年3月期)とこのQ2の営業利益・純利益の推移は以下の通りです。
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売上高とは対照的に、佐川が上回っています。
ただ、近年高成長を続けていた佐川も、減速の兆候が見られます。
2023年3月期の営業利益は前年比▲13.1%の減益となり、2024年3月期も同▲32.4%の減益予想となっています。
また、2023年3月期の純利益は増益しているように見えますが、株式売却による特別利益を除けば実質減益です。
「2024年問題」も間近に迫り、今後の業績がどのように推移するのか、注目です。
・利益率・ROE
2024年3月期第2四半期の利益率・ROEは以下の通りです。
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利益率・ROEともに佐川が上回りました。
過去7年(2017年3月期~2023年3月期)とこのQ2の営業利益率・純利益率の推移は以下の通りです。
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佐川が上回っています。
ただ両社とも利益率が低下傾向です。
■BS(貸借対照表)の比較
次に、BSを比較します。
2024年3月期第2四半期の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
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資産合計はヤマトが上回りました。
自己資本比率はヤマト:52.2%、佐川:63.4%と、佐川が上回りました。
資産規模に対する有利子負債の割合は、佐川の方が高いです。
両社のBSを図にすると以下の通りです。
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BSのバランスは両社似ていますが、佐川は流動資産が負債合計(流動負債+固定負債)を上回っており、より財務の安全性は高いです。
■その他の項目(株価、配当など)
株価、配当など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
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・PER・株価
PERはヤマト:16.9倍、佐川:21.3倍です。
両社の株価の推移は以下の通りです。
まずはヤマトです。
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続いて、佐川です。
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・配当・増配率
配当利回りは、ヤマト:1.83%、佐川:2.48%と、佐川が上回りましたが、どちらも利回りは高くありません。
佐川の配当性向は52.9%と、予想1株純利益の低迷により、配当性向が高くなっています。
配当性向が高いと今後の増配への期待が薄くなりますので、今後予想1株純利益が改善していくか、注目です。
過去6年間と2024年3月期予想の両社の配当の推移は以下の通りです。
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業績が改善する中で佐川の1株配当は改善してきましたが、伸びが鈍化しています。
配当の原資はあくまで本業で稼ぐ利益です。
本業に減速感がでていますので、注意が必要です。
■おわりに
物流大手2社の比較、いかがでしたでしょうか?
グラフや決算説明資料を多く用いて、視覚的に両社の違いを感じて頂けるように意識しました。
両社ともに減収減益、業績予想の下方修正と、厳しい決算となりました。
近年高成長をしてきた佐川も、減速感がでてきています。
働き方改革関連法に伴う時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」も近づき、両社の株価は軟調な推移になるかもしれません。
2024年問題のその先に、両社の成長性を感じられるかどうかが、投資をする上でのポイントになりそうですね。
あなたはどう思いますか?
なお、「もしどちらかに投資をするなら、どちら選びますか?」とX(旧Twitter)でアンケートをとっとところ、結果は以下の通りでした。(アンケート実施=2023年6月)
もしどちらかに投資するなら、どちらを選びますか?
— かたつむり君@決算分析&個別株投資 (@posikatatsumuri) June 4, 2023
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
★★私が株式投資において参考にした書籍を以下の記事にまとめています!★★
よろしければご覧ください!
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