私は毎年資産+10%達成を目標に投資に励むサラリーマン投資家です。
通勤時間や平日の夜、週末の時間を使って、売買候補となる銘柄の研究を行っています。
日々様々な情報が飛び交いますが、特に年に4回(四半期に1回)行われる決算発表は、企業の業績・状態を把握し、今後の投資戦略を考える上でとても重要な情報です。
この記事では、私が保有中 or 気になっている銘柄の決算発表内容をチェックし、今後の投資戦略について私なりの視点で書いていきます。
記載している銘柄を推奨しているわけではありませんが、私の視点や考え方が読者の方の参考になれば嬉しいです。
■本日のチェック銘柄
今日チェックするのは顧客情報管理(CRM)のクラウドサービスを提供するセールスフォース・ドットコム(ティッカーシンボル:CRM)です。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)上場で、決算期は1月です。
SBI証券お客様サイト内の銘柄サマリー情報より数値を抜粋すると、時価総額は2,905億ドル、従業員数は56,606人です。
私が勤める会社でもセールスフォースのシステムを導入しており、私にとっては比較的身近な銘柄です。
昨年12月にはビジネスチャット事業を展開するスラック・テクノロジーズ(Slack)を約2兆8900億円で買収したことも話題になりました。
どのようなシナジーが生み出されて成長を続けていくのか、これから注目していこうと思っています。
なお、現在私はセールスフォース・ドットコムの株を保有していません。
■決算発表内容の概要
2021/11/30(火)に発表した2021年8~10月期(第3四半期)決算の主な内容は以下の通りです。
【主な決算内容】(単位:百万ドル)
売上高 (Total revenues):6,863(前年同期:5,419 前年同期比:+26.6%)
営業利益(Income from operations):38(前年同期:224 前年同期比:▲83.0%)
純利益 (Net income):468(前年同期:1,081 前年同期比:▲56.7%)
資産合計(Total assets):87,436(前期末:66,301)
自己資本(Total stockholders’ equity):57,054(前期末:41,493)
現金 (Cash and cash equivalents):4,753(前期末:6,195)
有利子負債(Noncurrent debt):10,591(前期末:2,673)
営業CF(Net cash provided by operating activities):+404(前年同期:+339)
投資CF(Net cash used in investing activities):▲976(前年同期:▲1,035)
財務CF(Net cash provided by (used in) financing activities):▲970(前年同期:+368)
■決算発表内容分析のものさし
決算発表内容について、私は主に①成長性、②収益性、③安全性、④キャッシュ創出力、の4つの観点からチェックをしています。
それぞれの観点について、主な指標とその計算方法、優秀と認定する目安は以下の通りです。
優秀と認定する目安をクリアした項目が多い銘柄ほど、買いたい銘柄、保有し続けたい銘柄ということになります。
★成長性
【主な指標】
増収率、増益率(営業利益・純利益)
【計算方法】
増収率(%)=(今期の売上÷前期の売上-1)×100
増益率(%)=(今期の利益÷前期の利益-1)×100
【優秀と認定する目安】
増収率、増益率ともに+10%以上
★収益性
【主な指標】
売上高営業利益率、売上高純利益率、ROE(自己資本利益率)
【計算方法】
売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100
売上高純利益率(%) =純利益 ÷売上高×100
ROE(%) =純利益÷自己資本×100 ※四半期決算時は純利益を年換算し算定
【優秀と認定する目安】
売上高営業利益率:15%以上
売上高純利益率 :10%以上
ROE :15%以上
★安全性
【主な指標】
自己資本比率、現金>有利子負債か
【計算方法】
自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100
【優秀と認定する目安】
自己資本比率:30%以上80%以内
現金>有利子負債であること
※ただし、一概に自己資本比率が高ければいいというわけではなく、有利子負債が多いとダメでもなく、業態や企業の成長フェーズによって個別に評価する必要がある、と考えています。)
★キャッシュ創出力
【主な指標】
営業CFがプラスか、営業CF>営業利益か
【優秀と認定する目安】
営業CFがプラスであること
営業CF>営業利益であること
■決算発表内容分析
それでは、上記のものさしに沿って、実際に決算発表内容を分析していきます。
●成長性のチェック
売上高は前年同期比+26.6%でした。
営業利益は同▲83.0%でした。
純利益は同▲56.7%でした。
Q3の業績は増収減益でした。
売上高は10%を越えての増収となりましたが、営業利益・純利益は大幅な減益となりました。
売上総利益(Gross Profit)が+24.7%(4,025→5,019)であるのに対し、販売費及び一般管理費は31.0%増加しましたので、減益となったのもうなずけます。
販売費及び一般管理費に着目すると、研究開発費(Research and development)が+33.4%(902→1,203)、販売・マーケティングに関する費用(Marketing and sales)が+30.9%(2,377→3,111)と、売上高の増加を上回って経費が増加しました。
9ヶ月累計でみると、売上高は前年同期比+24.2%、営業利益は同+176.3%、純利益は同▲61.3%と段階利益によってまちまちの結果となりました。
昨年の純利益に、税制優遇による収益(Benefit from income taxes)が1,669あるので、昨年の純利益が異常値なのかもしれませんが、税引前純利益で見ても前期比▲19%ですので、決していい内容の決算ではありませんでした。
●収益性のチェック
売上高営業利益率は0.6%、売上高純利益率は6.8%、ROEは3.4%でした。
いずれも指標としている水準には届きませんでした。
過去3年の実績を見ると、売上高営業利益率は4.0%、1.7%、2.1%、売上高純利益率は8.4%、0.7%、19.2%でした。
やはり昨年の純利益が異常値なのがわかります。
収益性は決して高いとは言えないようです。
●安全性のチェック
自己資本比率は65.3%でした。
保有している現金は4,753、有利子負債は10,591で、有利子負債が上回りました。
自己資本比率は問題のない水準ではありますが、前期末と比べると、現金▲1,442(6,195→4,753)と減っているのに対し、有利子負債は+7,918(2,673→10,591)と大きく増えています。
また、現金が減っている中で、資産合計は+21,135(66,301→87,436)と大きく増えています。
この要因は昨年スラックの買収によりのれん(Goodwill)が+21,633(26,318→47,951)増えていることによるものです。
アメリカの会計基準では、日本の会計基準のようにのれんは定期償却されないため、現時点でPLにとってマイナスの影響は出ていませんませんが、今後スラック事業の低迷があった場合には、巨額の減損損失を計上するリスクをはらんでいます。
買収後のシナジーをしっかりだしていけるのか、今後の業績推移に注目です。
●キャッシュ創出力のチェック
営業CFは+404と、キャッシュインとなりました。
営業利益38を超えてのキャッシュインとなりましたが、今期は営業利益の水準が非常に低いためあまり参考にならないかもしれません。
上記の数値は3ヶ月(8-10月)のキャッシュの動きですが、同社のキャッシュの動きは今期9ヶ月間の数値で見た方が正確に捉えることができます。
9ヶ月間の累計では営業CFが+4,018、投資CFが▲13,077、財務CFが+7,635でした。
本業からのキャッシュ(=営業CF)に加え、社債発行(issuance of debt)による資金調達(=財務CF)により、大型の企業買収(Business combinations)(=投資CF)に踏み切ったというのが、キャッシュの動きからもよくわかります。
今後この投資が売上高や利益の上昇につながるのか、次回以降の決算発表に注目していきいたいと思います。
■業績予想に対する進捗度
SBI証券お客様サイト内の財務詳細情報に記載されている今期業績予想に対する進捗度をチェックします。
業績予想に対する進捗度は、年間の業績予想が妥当なものかを考える上で大切な指標です。
もし進捗度が高い場合は、業績予想の上方修正が発表される可能性もあります。
Q1は25%、Q2は50%、Q3は75%、Q4は100%を超えている場合を優秀と定義して、チェックしていきます。
もちろん企業によって季節波動がありますので、単純に数値だけをみるのではなく、前年度の四半期進捗を参考にするのも大事ですね。
売上高の進捗度は72.8%でした。純利益の進捗度は177.7%でした。
(営業利益は予想がないため割愛します。)
売上高はQ3の目安である75%には届きませんでした。
純利益はすでに通期予想を上回っていますが、そもそもの通期予想が前期比▲79.7%であることと、Q4の純利益予想が赤字であることから、あまり評価できる状態ではないかと思います。
■来期の業績予想から見る将来成長性
SBI証券お客様サイト内の財務詳細情報より、来期の業績予想をチェックします。
今期の会社発表の業績予想を起点に、来期の成長性を見ていきます。
来期の売上高成長率は+20.8%、純利益成長率は▲13.3%と予想されています。
(営業利益は業績予想がないため割愛します。)
売上高は引き続き高成長ですが、今期に比べるとやや減速しています。
また純利益は減益予想となっています。
来期に向けて、やや厳しい見通しとなっています。
■株価水準とチャートの動き
12/1(水)の終値は251ドルです。PERは300倍を超えています。
過去5年の株価の動き(週足)は以下の通りです。
株価は右肩上がりに伸びており、5年前から約4倍の水準になっています。
PERも300倍を超え、投資家の期待も非常に高い銘柄であることが伺えます。
ただし今回の決算発表を受けて翌日の株価は▲11.7%と大きく下落しました。
今後の動きに注目です。
■私の投資戦略
以上の分析内容を簡単に表に整理すると、以下のようになります。
過去5年間の株価推移とPERを見ても、投資家期待の高い銘柄であることはわかりますが、今期の業績、来期の業績予想を見ると、しばらく株価は調整するのではないかと思っています。
特にスラックの買収により財務体質が大きく変わってきていますので、大型買収の効果が今後売上高・利益に出てこないようだと、株価は大きく調整する危険をはらんでいると感じています。
ちなみにセールスフォースはダウ平均採用銘柄ですので、同社の株価が大きく調整する場合、ダウ平均の足を引っ張ることになるかもしれません。
指数全体への影響という意味でも、今後の株価の推移には注目です。
PER300倍なので、どこまでPERが下がれば割安なのかは非常に難しいのですが、コロナ前の水準の150ドルを割るくらいまで下がらないと、手は出しづらいところです。
目先1年ほどは様子見が続くと思いますが、私が勤める会社でもセールスフォースは導入されていますし、スラックが展開するビジネスチャットも今後ますます普及していくとは思いますので、将来的には期待したい銘柄ではあります。
以上が私の戦略です。
■まとめ
長くなりましたが、お読み頂きありがとうございました!
私はだいたい25銘柄程度の注目銘柄を決めて、上記のような観点で継続的に観察を続けています。
そして5年で株価2倍が期待できる銘柄を、いいタイミングで買うことを目指して日々観察をしています。
上記の銘柄を推奨するわけではありませんが、銘柄選択の視点や考え方など、読者の皆さんの参考になったのであれば嬉しいです。
毎年資産+10%達成を目指して、引き続き頑張ります!
ということで、本日は以上です!
お読み頂きありがとうございました!
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