皆さんこんにちは。
個別株投資で毎年資産+10%を目指すサラリーマン投資家、かたつむり君です。
通勤時間や平日の夜、週末の時間を使って、売買候補となる銘柄の研究を行っています。
日々様々な情報が飛び交いますが、年に4回(四半期に1回)行われる決算発表は、企業の業績・状態を把握し、今後の投資戦略を考える上で特に重要な情報です。
この記事では、私が保有中 or 気になっている銘柄の決算発表内容をチェックし、今後の投資戦略について私なりの視点で書いていきます。
記載している銘柄を推奨しているわけではありませんが、私の視点や考え方が読者の皆さんの参考になれば嬉しいです。
■本日のチェック銘柄
今日チェックするのは米・オンライン旅行会社(OTA:Online Travel Agent)のエクスペディア・グループ(ティッカーシンボル:EXPE)です。
NASDAQ上場で、決算期は12月です。
SBI証券お客様サイト内の「銘柄サマリー情報」より数値を抜粋すると、時価総額は244億ドル、従業員数は14,800人です。
TVCMも展開している「Hotels.com」や「トリバゴ」も同社のグループ企業です。
私がこの会社に注目している理由は
①旅行・宿泊のオンライン予約は今後も伸びていくと考えているから
②以前ラオスに旅行に行った際にエクスペディアを使って予約したが、便利だと感じたから
です。
なお、現在私はエクスペディア・グループの株は保有していません。
■決算発表内容の概要
2022/5/2(月)に発表した2022年1~3月期(第1四半期)決算の主な内容は以下の通りです。
【主な決算内容】(単位:百万ドル)
売上高 (Revenue):2,249(前年同期:1,246 前年同期比: +80.5%)
営業利益(Operating loss):▲135(前年同期:▲369 前年同期比:-)
純利益 (Net loss attributable to common stockholders):▲122(前年同期:▲606 前年同期比:-)
資産合計(Total assets):24,577(前期末:21,548)
自己資本(Total Expedia Group, Inc. stockholders’ equity):2,078(前期末:2,057)
現金 (Cash and cash equivalents):5,552(前期末:4,111)
有利子負債(Current maturities of long-term debt, Long-term debt):7,719(前期末:8,450)
営業CF(Net cash provided by(used in) operating activities):+2,991(前年同期:+2,170)
投資CF(Net cash used in investing activities):+13(前年同期:▲180)
財務CF(Net cash provided by(used in) financing activities):▲663(前年同期:+210)
■決算発表内容分析のものさし
決算発表内容について、私は主に①成長性、②収益性、③安全性、④キャッシュ創出力、の4つの観点からチェックをしています。
それぞれの観点について、主な指標とその計算方法、優秀と認定する目安は以下の通りです。
優秀と認定する目安をクリアした項目が多い銘柄ほど、買いたい銘柄、保有し続けたい銘柄ということになります。
★成長性
【主な指標】
増収率、増益率(営業利益・純利益)
【計算方法】
増収率(%)=(今期の売上÷前期の売上-1)×100
増益率(%)=(今期の利益÷前期の利益-1)×100
【優秀と認定する目安】
増収率、増益率ともに+10%以上
★収益性
【主な指標】
売上高営業利益率、売上高純利益率、ROE(自己資本利益率)
【計算方法】
売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100
売上高純利益率(%) =純利益 ÷売上高×100
ROE(%) =純利益÷自己資本×100
※四半期決算時は純利益を年換算し算定
【優秀と認定する目安】
売上高営業利益率:15%以上
売上高純利益率 :10%以上
ROE :15%以上
★安全性
【主な指標】
自己資本比率、現金>有利子負債か
【計算方法】
自己資本比率(%)=自己資本÷資産合計×100
【優秀と認定する目安】
自己資本比率:30%以上80%以内
現金>有利子負債であること
※ただし、一概に自己資本比率が高ければいいというわけではなく、有利子負債が多いとダメでもなく、業態や企業の成長フェーズによって個別に評価する必要がある、と考えています。
★キャッシュ創出力
【主な指標】
営業CFがプラスか、営業CF>営業利益か
【優秀と認定する目安】
営業CFがプラスであること
営業CF>営業利益であること
■決算発表内容分析
それでは、上記のものさしに沿って、実際に決算発表内容を分析していきます。
●成長性のチェック
Q1の売上高は前年同期比+80.5%でした。
営業利益は前年同期の▲369に対し今期は▲135、純利益は前年同期の▲606に対し今期は▲122、いずれも赤字となりました。
赤字幅は縮小しました。
21Q3、21Q4と2期連続で四半期黒字が続いていましたが、このQ1では再度赤字となりました。
売上高は指標の+10%を大きく上回りました。
総予約額(total gross booking)は前年同期比+58%、コロナ前の2019年同期比で▲17%でした。
2019年同期比の減少率は最少となりました。
営業利益は赤字となりましたが、その要因は販売促進費(Selling and marketing)の増加です。
前年同期比の約2倍と大幅に増加しています。(664→1,339)
通期の売上高をセグメント別、プロダクト・サービス別で見ると、以下の通りです。
セグメント別では76%がリテールで、B2Bが19%です。
プロダクト・サービス別では宿泊(Lodging)が72%で、広告メディア(Advertising and media)が7%、航空(Air)が3%と続きます。
●収益性のチェック
営業利益・純利益ともに赤字のため、収益性のチェックは割愛します。
参考に、コロナ前2019年は、売上高営業利益率が7.5%、売上高純利益率が4.7%でした。
●安全性のチェック
自己資本比率は8.5%でした。
保有している現金5,552、有利子負債は7,719と、有利子負債が現金を上回りました。
コロナ前の2019年末は自己資本比率が18.5%、現金3,315、有利子負債4,938でした。
コロナによって純資産が毀損したことで自己資本比率が悪化、運転資金を確保するために有利子負債が増加、といった構図が伺えます。
●キャッシュ創出力のチェック
営業CFは+2,991と、キャッシュインとなりました。
営業利益が▲135の赤字にもかかわらず、営業CFは大きくプラスでした。
営業CFが大きくプラスとなった要因は、まだ売上高に計上されていない4月以降の予約に関する入金が大幅に増加したためです。(Deferred merchant bookings:+3,515)
Q1は営業利益が赤字でしたが、先行受注状況の良好さをキャッシュの動きから感じることができます。
このキャッシュの動きは航空大手ユナイテッド エアラインズの直近決算でも同様に見られました。
(ユナイテッド エアラインズではCF計算書の開示はありませんでしたが、貸借対照表の「Advance ticket sales」にその動きが表れていました。)
財務CF▲663の主な要因は長期借入金の返済(Payment of long-term debt:▲724)です。
キャッシュフローの概要を図にすると以下の通りです。
本業で得たキャッシュ(営業CF)を使い、借入金を返済(財務CF)しており、良好な循環です。
営業CFの多くは4月以降の予約に対する入金であるため、もし予約のキャンセルが発生すれば、Q2以降の営業CFがマイナスになることになります。
特に米国においてコロナの感染拡大が再度起こることがないか、注意していく必要があります。
■業績予想に対する進捗度
SBI証券お客様サイト内の「財務詳細」情報に記載されている今期業績予想に対する進捗度をチェックします。
業績予想に対する進捗度は、年間の業績予想が妥当なものかを考える上で大切な指標です。
もし進捗度が高い場合は、業績予想の上方修正が発表される可能性もあります。
Q1は25%、Q2は50%、Q3は75%、Q4は100%を超えている場合を優秀と定義して、チェックしていきます。
もちろん企業によって季節波動がありますので、単純に数値だけをみるのではなく、前年度の四半期進捗を参考にするのも大事ですね。
業績予想に対する売上高の進捗度は19.0%でした。
今後夏にむけての回復が期待されます。
純利益は947の黒字予想に対し▲122の赤字でのスタートとなりました。
Q2以降、特に夏の旅行シーズンと重なるQ3での巻き返しに期待です。
■来期の業績予想から見る将来成長性
SBI証券お客様サイト内の「財務詳細」情報より、来期の業績予想をチェックします。
今期の業績予想を起点に、来期の成長性を見ていきます。
売上高は+16.1%、純利益は+40.4%と、増収増益と予想されています。
コロナ禍からの脱却が期待される今期にどの水準で着地するかによって、来期の成長率見通しは流動的だと思いますが、明るい展望となっています。
■株価水準とチャートの動き
5/4(水)の終値は149ドルです。PERは26倍です。
過去5年の株価の動き(週足)は以下の通りです。
2020年のコロナショックで一時的に大きく下落しましたが、その後は右肩上がりで上昇しました。
200ドルをなかなか抜けきれず、現在は150ドルを切る水準まで調整しています。
■私の投資戦略
以上の分析内容を簡単に表に整理すると、以下のようになります。
コロナ禍で最も甚大なダメージを受けた業界の一つである旅行業界。
2020年、2021年と苦しい状況が続きましたが、先行きはだんだんと明るくなってきています。
Q1は増収赤字での着地となりました。
21Q3、21Q4と2期連続で続いていいた四半期黒字の流れは一旦ストップしてしまいましたが、前年同期比でみれば赤字幅は縮小していますし、総予約額(total gross booking)はコロナ前の2019年同期比▲17%まで回復してきました。
2019年同期比の減少率はパンデミック以降の最少となりました。
キャッシュの動きからも先行きの明るさを感じることができます。
「インフレや地政学リスクといった動向は注視するものの、今夏レジャー旅行が力強く回復するという前向きな指標を継続的に見ることが出来ている」と決算説明資料にも記載があり、回復への自信が垣間見えます。
“All in, while we are keeping an eye on various macro indicators including inflation and ongoing geopolitical tensions, we continue to see positive indicators for a strong recovery in leisure travel this summer. “
同社は配当がないため、キャピタルゲイン狙いで「5年で株価2倍」を狙っていく銘柄となります。
買付の目安は130ドルです。(現在の株価▲13%の水準)
円安が落ち着いてきてくれるといいのですが・・・
以上が私の戦略です。
■まとめ
私はだいたい25銘柄程度の注目銘柄を決めて、決算発表内容と会社四季報を見比べながら、上記のような観点で継続的に観察しています。
そして5年で株価2倍が期待できる銘柄を、いいタイミングで買うことを目指しています。
上記の銘柄を推奨するわけではありませんが、銘柄選択の視点や考え方など、読者の皆さんの参考になれば嬉しいです。
毎年資産+10%達成を目指して、引き続き頑張ります!
ということで、本日は以上です!
お読み頂きありがとうございました!
■参考:同社に関する過去の記事
・【エクスペディア】22/2/10決算発表内容と私の投資戦略
※22/2/10(木)に発表した2021年10月~12月期(第4四半期)決算についての記事です。
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