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本記事以降の決算発表についても記事を書いています!
興味がある方は、以下の記事をご参照下さい。
最新の決算比較 こちらからどうぞ!
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皆さん、ビールは好きですか?
アサヒ派ですか?それともキリン派ですか?
この記事では、ビールメーカー大手2社、キリンホールディングス(銘柄コード:2503、以下「キリン」)とアサヒグループホールディングス(同:2502、以下「アサヒ」)の決算書を比較します。
複数の会社の決算書を比較することで、その会社の個性がよりわかるようになります。
両社の違いを感じて頂き、少しでもあなたの投資の参考になれば嬉しいです。
ビールでも飲んでリラックスしながら、「自分が買うとしたらこっちだな~」などと考えながら読んで頂けたら嬉しいです。
なお、この記事では、今年2月に発表された2022年12月期の数値を用いて比較します。
■PL(損益計算書)の比較
まずはPLを比較します。
・売上高・営業利益・純利益
2022年12月期の売上高・営業利益・純利益と、増収率・増収率は以下の通りです。
売上高はアサヒが上回りました。
アサヒは+12.3%、キリンは+9.2%と、両社ともに前年比で増収となりました。
アサヒは2011年の持ち株会社移行後過去最高を2年連続で更新しました。
一方のキリンは、直近2年間減収が続いていましたが(2020年12月期:▲4.7%、2021年12月期:▲1.5%)、3年ぶりに増収に転じました。
過去13年(2010年12月期~2022年12月期)の売上高の推移は以下の通りです。
全体的な傾向としてはアサヒが上昇傾向であるのに対し、キリンは下落傾向ですが、今期キリンが増収に転じましたので、今後の両社の推移に注目です。
営業利益、純利益ともに、金額ではアサヒが上回りました。
営業利益は約1.9倍、純利益は約1.4倍です。
アサヒの増益率が営業利益:+2.4%、純利益▲1.3%だったのに対し、キリンの増益率は営業利益:+70.4%、純利益:+85.7%と、キリンが大きく上回りました。
これは、キリンが前期にミャンマー事業の落ち込みなどで大幅減益になったことの反動です。
過去13年(2010年12月期~2022年12月期)の営業利益の推移は以下の通りです。
かつてはキリンの方が多くの営業利益を稼いでいましたが、近年はアサヒがキリンに大きく差をつけています。
・利益率・ROE
2022年12月期の利益率・ROEは以下の通りです。
売上高営業利益率、売上高純利益率はアサヒが上回り、ROEはキリンが上回りました。
過去13年(2010年12月期~2022年12月期)の利益率推移は以下の通りです。
アサヒは2020年12月期こそ新型コロナウイルス感染拡大の影響で落ち込みましたが、それ以外の年はおおむね右肩上がりに推移しています。
一方キリンは、利益率の上下動が激しい印象です。
特に2019年12月期以降は利益率が大きく悪化していることがわかります。
収益性及び安定感の面では、アサヒに軍配があがります。
・セグメント別売上高・利益構成比
両社のセグメント別売上高・利益の構成比を見ていきます。
まず、アサヒの売上高構成比、営業利益構成比は以下の通りです。
前年度までは「酒類事業」「飲料事業」「食品事業」「国際事業」と、事業ごとのセグメントでしたが、今年度からは上記の通り地域別のセグメントに変更となりました。
売上高の52%、営業利益の41%を稼ぐ日本が稼ぎ頭で、そこにオセアニア、欧州が続きます。
オセアニアは売上高では23%ですが営業利益では34%と利益率が高いことがわかります。
続いて、キリンの売上高構成比、セグメント利益構成比は以下の通りです。
主力は売上高の33%、セグメント利益の30%を占める国内ビール・スピリッツです。
医薬は、売上高では20%ですが、利益では34%と、主力の国内ビール・スピリッツを上回るセグメント利益をたたき出しました。
医薬関連事業(協和キリン)やプラズマ乳酸菌などのヘルスサイエンス領域など、ビール以外の事業が今後どのように拡大していくか、注目です。
■BS(貸借対照表)の比較
次に、BSを比較します。
2022年12月期末の資産合計、自己資本、現金、有利子負債、自己資本比率は以下の通りです。
自己資本比率は同程度ですが、BSの規模(資産合計)としてはアサヒの方がキリンより大きいことがわかります。
アサヒはBSの規模の割に、現金がかなり少ないことがわかります。
キリンの方が現金の保有が多く、資産合計に対する有利子負債の比率も低く、財務の安全性は高いと言えます。
両社のBSを図にすると以下の通りです。
短期的な安全性を示す流動比率(流動資産÷流動負債×100%)を比べると、アサヒは58.3%、キリンは138.6%です。
アサヒは、流動資産よりも流動負債が多く、安全な目安とされる100%を割ってしまっています。
固定資産の割合が特に大きいのは気になります。
決算短信を見ると、「のれん及び無形資産」が3,027,929百万円と大きく、資産合計の62.7%とかなりの割合を占めます。
のれんについては将来的な減損のリスクなどがありますので、資産として計上されていますが注意が必要です。
一方、キリンの「のれん」は289,526百万円で、資産合計に占める割合は11.4%です。
BSから見た安全性では、キリンに軍配があがります。
■CF(キャシュフロー計算書)の比較
続いて、CFを比較します。
2022年12月期の両社のCFの概要は以下の通りです。
まずはアサヒです。
続いてキリンです。
営業CFが大きくプラスであること、財務CFが大きくマイナスであることは両社ともに共通しています。
アサヒの財務CFの主な内容は、
・社債の償還による支出・収入:▲80,000百万円
・配当金の支払:▲55,738百万円
・長期借入金の返済:▲51,460百万円 です。
キリンの財務CFの主な内容は、
・長期借入金の返済:▲67,612百万円
・コマーシャル・ペーパーの純増減額:▲55,009百万円
・配当金の支払:▲53,778百万円
・自己株式の取得:▲50,040百万円 です。
■2023年12月期の予想
2023年12月期の両社の通期予想は以下の通りです。
両社とも増収増益予想ですが、増収率に比べると増益率は弱い予想となっています。
■その他の項目(株価、配当、株主優待など)
株価、配当、株主優待など、そのほかの項目を比較すると以下の通りです。
・PER・株価
PERは投資を検討する際に気になることの一つです。
アサヒは14.6倍、キリンは14.5倍と、PERはほぼ同じです。
両社の株価の推移は以下の通りです。
まずはアサヒです。
続いて、キリンです。
両社の株価を比べるとキリンの方が低迷している印象です。
・配当
配当利回りはキリンが上回りました。
配当性向はアサヒが37.0%と、キリンが49.5%と、アサヒの方が配当余力があると言えるかもしれません。
・株主優待
株主優待は株式投資の楽しみの1つです。
両社とも株主優待があります。
アサヒはは100株以上保有で、年1回1,000円相当のグループ会社商品等が送られます。
株主特製ビール、酒類詰合せ、飲料・食品詰合せより1点選択できます。
キリンは100株以上保有で、年1回1,000円相当の自社グループ会社商品が送られます。
酒類・清涼飲料詰合せ等6点より1点選択できます。
■おわりに
ビール大手2社の比較、いかがでしたでしょうか?
あなたはどちらの会社の株主になりたいと思いましたか?
売上高や利益の規模や安定感からはアサヒ、財務の安全性や配当利回りの良さではキリンと、何を重視するかによって好みが分かれそうですね。
2022年7月に、Twitterでどちらの方が投資対象として興味があるかアンケートをとりましたが、結果は拮抗していました。
私自身はキリンの株主ですので、今後アサヒの売上高や利益に迫る成長を遂げてくれることを期待して、長期にわたって応援していきたいと思っています!
この記事を通して、複数の会社を比較する面白さを感じて頂けたら嬉しいです。
本日もお読み頂きありがとうございました!
■参考:両社に関する過去の記事
・夏本番!あなたはアサヒ派?キリン派?財務諸表比較3番勝負!
・【キリンホールディングス】22/2/14決算発表内容と私の投資戦略
・【アサヒグループホールディングス】22/2/15決算発表内容と私の投資戦略
★★私が株式投資において参考にした書籍を以下の記事にまとめています!★★
よろしければご覧ください!
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